K.G.R

【KGR】手のひらで紡がれる極上フューチャーベース。「Magical Subscription – by Hyuumatec」

メロディアスなリードシンセ。過剰なキメと、そこに重なるボイスサンプルやヒット。ハーフステップから倍取りになるドラム。終盤の16分フレーズ…。

今回のKORG Gadget Recommendsは、この夏開催されたKORG Gadget非公式コンペティション「GadgetSonic2018」において、優秀作「BEST OF SONIC」の一曲に輝いた作品を紹介します。

Magical Subscription – by Hyuumatec

この疾風感溢れる王道的フューチャーベース・トラックについて、作者Hyuumatecさんに、たっぷりお話を伺うことができました。

コルガジェユーザーのみならず、トラックメーカーなら非常にタメになるノウハウが満載ですよ!

制作環境について

【使用デバイス】

Apple iPhone 6

【使用アプリ】

KORG Gadget for iOS

【モニター環境】

Panasonic RP-HJE150(イヤホン)

SONY MDR-900ST(ヘッドホン)

audio-technica AT-SPB5(スピーカー)

驚くべきことに、このトラックは「iPhone」だけで制作されています。

それも、最新モデルに比べるとスペック的に劣るiPhone 6。

iPhone 6では沢山トラックを立ち上げると負荷がかかってしまうため、同じ音をフレーズを変えて繰り返し使ったり、サンプルを鳴らすトラックを一纏めにしたりして、トラック数を抑えつつも音が薄くならないように工夫しています。

きっとこの曲のクリップ達は、どれもシーケンスがギチギチに埋まっているんでしょうね。

たとえデバイスの処理能力に限界があっても、このような「工夫」で乗り切れることを、「Magical Subscriptionは私たちに教えてくれます。

テクニックについて

お待たせいたしました。

BEST OF SONICに輝いた楽曲で使われた数々のテクニックを、作者Hyuumatecさん自ら惜しげも無く披露いただいております。必見ですよ!

ドラム周り

リズムトラックは、RecifeBilbao(2台)Londonと、3種類のドラムマシンが用いられています。

まず、メインのキックとシンバルにRecife。

Bilbaoは、スネア・シンセタム・ボイスヒット・ライザーなどを担当しています。

そしてLondonは、808スネアやクラップ、それに細かいハット。

さすがにリズム隊は、重厚かつ強力な布陣です。

上モノ関係

煌びやかなアナログシンセから、存在感溢れる生音系まで、あらゆるサウンドが現れては消えるゴージャスな上モノは、前者をLisbon、後者をMarseilleを中心に組まれているとの事。

サイドチェインが効いたり効いてなかったりと起伏に富むブラスや、Berlinによるウネるような鮮烈なリードサウンドがとても印象的です。

このリードは意外なことに、鍵盤ではなくピアノロールでノートを並べて作られたそう。

リードシンセのフレーズは、単に16分で打ち込むだけでは流石にちょっと芸がない気がしたので、繰り返し聴き込みながら音符の長さや間の置き方、スケールの外し方に気をつけつつ聴いていて楽しくなるようなメロディーになるようにしました。この工程が割と大変でした。

確かに16分や、それよりも細かいフレージング(半音上がってすぐ戻る、スケールに沿って上昇させる 等)を要所で使っていて、あたかもベンドさせてるかのように聴こえますね。

以下は、曲のオープニングで用いられているリードのフレーズですが、クォンタイズを32分にして細かく打ち込んでいることが分かります。

コード関係

メインのコード進行は、LisbonのChord機能(一本指で和音を弾くことができる機能)で鳴らして手を加え、同じものをMarseilleにコピペしてエレピで使っています。

ここら辺は、省エネ運転で最大効果をもたらす効率的なトラックメイクですが、それだけにとどまらないこんな工夫も。

当初は、エレピのコードはコピペしたままベタ打ちの状態だったんですが、制作中にたまたま母に聴かせたところ「エレピがベタッとしていて打ち込みくさい」という旨の指摘を受けたので、ノートをずらしたりベロシティを変えたりしてなんとかそれらしく聴こえるように調整しました。

確かに、エレピの和音弾きの所は「ポロロロ〜ン」とズラしていますね。

筆者もよくやるテクニックですが、クオンタイズをオフにして、ノートの発声タイミングをランダムっぽく後ろに移動させると、手弾きっぽくなります。

さらにベロシティーを散らすと、より「らしく」なるでしょう。

それにしても、自作曲をお母様に聴かせて「打ち込みくさい」とアドバイスをもらえるなんて、素敵なエピソードですね。

サイドチェインの使い方

フレーズに「ドヮフドヮフ」と起伏を持たせるテクニック・サイドチェインについても言及されました。

コード(Lisbon)とベース(Berlin)にサイドチェインを掛けていますが、実際に曲で鳴っているキックではなく、サイドチェイン用にミュートしたRecifeのキックをトリガーにしています。

サイドチェインというのは、「キック」などあるサウンドをトリガーにして、別のトラックの音量を一瞬だけ圧縮させる技法。

今日のEDMでは、定番中の定番テクニックです。

KORG Gadgetでの使い方は、こちらをどうぞ。

さらに、こんな工夫も。

この手法自体は普段からよく使うのですが、この曲に関してはドラムが倍のリズムになる部分でそのままキックをトリガーにして鳴らすと、サイドチェインを掛けた音が引っ込みすぎて聴こえなくなってしまうので、この部分を中心にトリガー用のキックは部分的に少し間引いて、音をはっきり聴かせつつもサイドチェイン感を出すようにしました。

これも注目に値するコメントです。

確かに、実際に鳴っているキックと「サイドチェイン用のキック」では、パターンが少々異なっていました。

サイドチェインをベッタリではなく「是々非々」に使うことで、後半のフレーズにメリハリが付けられているんですね。見事なテクニックです!

サンプル使い

そして、Hyuumatecさん自ら「この曲の肝」とおっしゃっているのが、Bilbaoによるサンプル使い。

Dubstep由来の硬いスネアや声ネタ、FutureやJersey Clubでお馴染みのRiser FXを、Garageband、djayといった外部AppやPCから取り込んでプリセットと共に使っています。

Bilbaoは実に懐深い音源で、多くの音ネタを取り揃えたプリセット・サンプラーとして使えるだけでなく、外部から5秒以内のワンショット系サンプルをインポートすることができ、そのまま自作曲への活用が可能。

つまり、この世の全てのサンプルは(5秒以内であれば)、すべてKORG Gadegtに取り込めるわけです。

Bilbaoは、Gadgetでの曲作りを手軽に拡張してくれる、とてもありがたいガジェットですね。

「再び音楽へのモチベーションを取り戻すきっかけを頂いた」

最後にHyuumatecさんから、こんな素敵なコメントをいただいております。

最近はDTMに対するモチベーションも下がり気味で、ただダラダラ過ごすことが多かったのですが、今回のイベント(ガジェソニ)をたまたまTwitterで知り「そろそろ何かやらなきゃだしちょっと参加してみるか…」と思い久しぶりに本腰を入れて曲を作りました。結果再び音楽へのモチベーションを取り戻すきっかけを頂いたような気がします。本当にありがとうございました。

多くのトラックメーカーに「作品発表の場」「腕試しの機会」を提供でき、長く途絶えていた創作に取り組むきっかけにもなった。

GadgetSonic 2018に関わった一員として、これほどありがたく、嬉しいコメントはありません。

今回のKGRは、GadgetSonic 2018においてBEST OF SONICに選ばれた、Hyuumatecさんの「Magical Subscription」をフューチャーしました。

それではまた。Have a nice trip!

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