GadgetSonic 2023 グランプリ作品発表
KORG Gadget
COMPOSITION COMPETITION
GadgetSonic 2023
🌴 GREEN FIELD 🌴
👑 BEST OF SONIC 👑
094:potatomahawk(ぽてまほ)「Zero Trust」
選評:オーケストレーションとチップチューンが融合。これぞpotatomahark(以下”ぽてまほ”)さんの作品。
出だしの、少し物悲しげなピュアなリードパートから聴く人をハッとさせる。そのままハイテンポで紡ぎ出される”ぽてまほ”ハードコアの世界へ案内される。
リードからベル系の音色がバトンを受け取り、チップチューンのシーケンスが絡んでくる。と思ったら、一気にテンポダウン。リズムパートをうまく使って徐々にテンポがアップ。高揚感を上げていき、2:14のブレイクにうまく繋げていく。ここからメインテーマに戻り、終盤戦へ。最後はバイオリンソロで静かに終幕。あっという間の3:28。
今回も目まぐるしく変わるテンポチェンジ部分等、全体を通してバッキングパートの丁寧な作り込みは圧巻。全体的なミックス調整にも時間をかけたであろう。
今回の作品はBPMの変化が目まぐるしい。プログレ的な要素も自然に含ませ、次はどんな展開なのかなと期待させる構成。そして何度も聴きたくなるリピート性が潜んでいる。
“ぽてまほ”さんといえば、ピアノ、チップチューン、ベル、オーケストレーション、非常に細やかなアーキュレーションという作風のイメージがあるが、作者が意識しようとしまいと、このイメージが自身の作風としてすでに確立させており、これは多くのリスナーにも認知されていることと思う。また、”ぽてまほ”さんは自身のテクニックを惜しげもなく公開されているが、このテクニックを使えば誰もが”ぽてまほ”さんになるわけではない。その感性は真似できないからだ。
本作もハイスピードながらも、緩急入り組む表現方法に取り組んだことで、さらに壮大で美しい曲への昇華に成功した。今回、自身の今までの作り方に対して、常に新しい表現に挑戦を試みていることを評価。KORG Gadgetってここまで作り込めるんだ!ということを多くのリスナーに示した唯一無二、孤高の作品である。まだまだ底が全く見えない才能に末恐ろしさを感じる。今後も新しい世界を広げて私たちリスナーをワクワクさせて欲しい。
Perfect works!
KORG Gadget
COMPOSITION COMPETITION
GadgetSonic 2023
🌴 GREEN FIELD 🌴
SONIC OF THE YEAR
181:ねこびっと「見上げてごらん、惑星の底から。 You can’t just leave this planet.」
選評:万博のパビリオンや、テーマパークで流れるような重厚なオープニング。作者の世界観へ一気に引きずり込まれていき、その後の展開に期待が高まる。
細かい装飾、効果音が現れながら消えて行き、ピュアなリード音が、”ねこびっと”さんらしい哀愁を感じるメロディラインを奏でながら物語は進んでいく。何かが飛び立つ、旅立つようなノイズ音のあと、舞台は静寂となる。終盤2:30からとても儚げなメロディー、最後は遠くで動物が鳴いているように聞こえる音だけが残り、美しい形で終幕を迎える。まるで長編を観ていたかのような3分44秒。
この作品は、目を閉じて聴けば、聴いた人それぞれの映像とストーリーが浮かび上がってくるのではないか。世界観とストーリー性の構築が秀逸な作品。
128:Penguin Robot「Pacific Ocean」
選評:1小節のメインリフを基本に曲を展開していく王道テクノ。 このリフだが聴いていて本当に心地良い。たった 1小節、されど 1小節。テクノの道はまだまだ奥が深い。
今回、この1小節の基本リズムやリフがとにかくかっこいい。この 1小節を生み出した瞬間の作者のほくそ笑みを想像する。
エントリー時の動画を参考にすると、London ×2。Lexington(ODYSSEY)×4のわずか6トラックで構成ながらも、作品としての完成度は非常に高く、装飾音やパターン変化による構成は完璧な出来。音響面では音の広がりやマスタリングにまで細かく手が入っている。
耳触りが心地よく、ずっと聴いていられる高レベルな作品。
146:simizy「lights loops」
選評:30秒からポップなライザーがいい感じのアクセントになって、曲を一気にアゲて本編に入っていく仕掛けにヤラレタ。
リードの音色や、曲中に何度も登場するカッコよく耳に残るメインのメロディーライン。丁寧に構築されたシーケンスライン。また主役を固めるバッキングも迫力を感じる。ミキシングや定位も丁寧に設定されており、疾走感が素敵な良ダンスナンバー。
093:RedStoneBridge「Black Object/黒いオブジェ」
選評選評:Zurichを存分に活用したボーカル作品。
KORG Gadgetで曲を作っている作家の方ならご理解いただけると思うが、完全なボーカル曲を作ろうとすると、かなりの手間暇がかかる。
KORG Gadgetで得意としているジャンルと真逆のHR/HM系をさらっと(作者は相当手間暇かけていると思うが…)再現していることに驚愕した。
曲の構成も、普通にカッコ良いし、ミキシングも丁寧。そして、ボーカルもシャウトもノリノリで、今回はどんな環境の中でレコーディングしたのかなと興味が湧いてくる。本作はウニョウニョ動くシーケンス音が心地良い。
今年で2回目のエントリーとなるRedStoneBridgeさんであるが、RedStoneBridgeさんに続くZurich作家が現れるのか今後も注視して行きたい。
090:Fxolingz「euforium」
選評:海外からの入選作品。
非常に印象的なストリングスのメロディーラインから始まるが、30秒あたりから疾走、静寂を繰り返して作品が表現されていく。オープニング、曲中、エンディングに流れてくる特徴的な4小節のストリングスのメロディーライン。これが非常に強力で曲全体のテーマを上手く纏めて引き締めるアクセントになっている。
昨年のエントリー作品apparitions, clearlyやecstasy にも通じる、どこかノスタルジックで少し物悲しい感じや、エフェクターの使い方が、独自の作風として確立されている。素晴らしい作品だった。次回作も期待したい。
Submission from overseas.
Starting off with a very impressive string melody line, from around 30 seconds onwards, the song begins to repeat sprinting and silence. A characteristic 4-bar string melody line that flows in the opening, during the song, and in the ending proves to be very effective and serves as an accent that successfully embraces and tightens the theme of the entire song.
Similar to last year’s submissions, “apparitions, clearly” and “ecstasy”, this piece has a somewhat nostalgic and slightly melancholy feeling, and the use of effectors has been established as this person’s unique style. Excellent piece. Looking forward to this song maker’s next work.
105:tominagayuki「Actual」
選評:9分強の大作アンビエント。前半はピアノを主体とした主題、中盤はベル系を主役にした主題、後半は両方の音が主題を奏でていく。
前半、朝日が昇るような、深海に沈んでいくような、木漏れ日の森林に佇んでいるような、リスナーによって様々だと思うが、主題を繰り返し、作者の世界へ。中盤に入ると、静寂につつまれた雰囲気に包まれる。主題は終止形が短調になり、雰囲気が変わってくる。終盤はまた主題が戻ってきて、安らぎの中で物語は終わりを迎える。素敵な作品だった。
是非、少し明るさを抑えた静かな環境を整えて試聴されることをおススメする。より曲と一体化して楽しめるためだ。
022:Kazuhiko Fujinawa「What is the legitimate subject of poetry?」
選評:ジャジーで渋い一曲。終始サックスが主役の曲なのだが、特に40秒台からのサックスソロ。この即興部分に尽きる。打ち込みでギターやサックスなどのソロは非常に表現しづらいのだが、アーティキュレーションを駆使した即興パートの表現はお見事。
正に今、行きつけのバーやバルのカウンターに座っているときに流れている曲。そんな錯覚を覚えた2分半の秀曲。
188:xxkadotani「Pop Stream」
選評:テクノポップやシティポップを想起させる作品。Lisbonをメインとした爽やかな曲調・リズムで曲が始まり、この曲の高評価ポイントであるボーカルが加わってくる。ただ、ボーカルは前面には出てこず、曲の中の背景の一部としてコーラスのような感じで溶け込んでおり、記憶の中の素敵な夏の記憶を思い出させるような感触。曲は終始長調なのだが、哀愁漂う少し大人のポップとなっている。このさりげないボーカルパートが、この曲の存在感を高めたと言っても良い。
今回、ボーカルを楽器として含ませることで、BGMのような、ボーカルありのポップソングのような、そんな不思議な曲となっている。
200:ミゾオカズオ「真夏の引っ越シンコペーション」
選評:8種類のガジェットでコンパクトにまとめられ表現された作品。作者に役割を与えられた大切な1音1音。夏だけど涼しげな感じを受けるガジェットの選択。音質もクリアで、爽やかな気持ちになれた。曲名にあるように、曲中にはさりげなくシンコペーションが用いられており、引越しトラックが、荷物を載せながらガタガタ揺らして走っているという映像が脳内再生される。
リスナーの皆さんは、是非作者手作りの動画を観ながら聴いてほしい。より作品が楽しめるはずだ。最後には作品で使用したガジェット名も明かしてくれる。
164:djhichannel「KITA-ZAWA SUNSET」
選評:4小節8つのコード進行をループしたオスティナート的な一曲。シンプルな構成ながらも、メロディーやシーケンスで変化を加えている。
曲名から、夕方から下北沢での楽しいひとときを連想させる。選者は繰り返すコード進行を下北沢の街並みとして、夕方に行き交う多くの人々をメロディやバッキングとしてイメージして楽しく試聴させていただいた。ミキシング面も丁寧に調整されており、耳触りも心地良い良作のハウスナンバー。
🔥 RED STAGE 🔥
🐠 BLUE LAKE 🐠
🏅 SONIC MEDAL🏅