GadgetSonic 2023 グランプリ作品発表
KORG Gadget
COMPOSITION COMPETITION
GadgetSonic 2023
🐠 BLUE LAKE 🐠
👑 BEST OF SONIC 👑
196:Swenzy 「そんな夏の日 feat. GUMI」
選評:まず、曲が始まるまでの無音8秒間すら愛おしい。これから味わうことになる、作者Swenzyさんの描く世界に期待が膨らむからだ。1リスナーとして、完全に焦らされていると言って良い。
そして静かに曲が始まる。残暑の郷愁を纏うエレピから入り程なくすると、なんとボーカロイド「GUMI」の歌声が。
それも巷にあふれるボカロソングとは一線を画す、不思議で聴いたことのない感触だ。その秘密は「英語版のライブラリで日本語を歌わせている」こと。こんなことは普通思い浮かばないし試みようともしないのだが、このアイデアによって「日本語でありながら洋楽的なニュアンス」を獲得。ぜひリリック付きの動画も期待したい。
作者の卓越した作曲技量とポップセンス、そして弛まぬ実験精神によって、ついにGadgetSonicはこの世にまたとない、唯一無二の名曲を生み出してしまった。
大会2連覇、おめでとうございます。
KORG Gadget
COMPOSITION COMPETITION
GadgetSonic 2023
🐠 BLUE LAKE 🐠
SONIC OF THE YEAR
095:Sontaku Ouji「子猫大捜査線(Securing kittens)」
選評:今大会において作者Sontaku Oujiさんは、一貫して「80s」を打ち出してきた。
おしゃれなコードワークで旋律はキャッチー、そして匂い立つファンクネス。あの時代を駆け抜けた者なら、この古き良き洗練さに共感できるだろう。
粘っこくてコシのあるシンセベースに乗る、煌びやかなブラス&エレピサウンドが印象的。一方か細い猫の鳴き声も織り交ぜるなど、全体的にどこかとぼけたニュアンスも、シニカルを良しとしたあの時代の空気感。
他がどうあれ、自分の好きな要素をとことん突き詰める。だからこそ、このような誰にも真似できないユニークを表現できたのだろう。
己の生み出す曲に生き様を刻む。これぞ創作の妙味。
129:st.fe「月下美人」
選評:ガバキックにフランジャーを深く効かせたボトムス…一聴すると今っぽいEDMの体を成すも、曲中盤からは “雅” を感じさせる、鮮烈な囃子やフレーズが入る。
あえて正反対の要素を掛け合わせたフュージョン・ミュージックは刺激的だ。うまくいけば双方によって化学変化がもたらされ、このような美しくも聴いたことのない異形トラックが誕生する。ただし、それを品よくまとめこむのは高度なスキルとセンスが要求され、決して簡単ではない。
本作品ならびに作者からは、己が産んだ曲を決して一本調子で終わらせたくない意思、意欲、そしてチャレンジングをビンビンに感じる。そんな心意気に感じ入り、ガジェソニ2023入選作とした。
真夏の終わりを疾走する、125秒の夢芝居。
197:ろわいてぃ〜「kleeblatt」
選評:昨年末から年明けにかけ催された、Twitterの「診断メーカー」が偶然引き当てた3ガジェットのみで勝負する作曲コンペ「3 Gadget challenge 2023」にて、見事グランプリを獲得した実力者の作品。
ピアノをメインとした、どこか歌心を感じさせる旋律が印象的なピースフル・ソング。リスナーの心をほぐしてくれるような癒し系トラックだが、のびやかな主旋律に絡まり合うカウンター・フレーズや、要所で輝く細やかな小物遣いなど、聴き込むごとに緻密な仕掛けや工夫を感じさせる。
楽曲として安定感があり、ずっと心地よく聴いていられる。リスナーみんなが笑顔になれるグッド・ミュージックだ。
117:mistyminds「Day by Day」
選評:GadgetSonic 2021ではグランプリを獲得。今年も参戦を果たした、KORG Gadget界隈きっての名手による逸品。
この曲では作者自らによるボーカル・コーラスがフィーチャーされているが、あくまでも控え目。この曲の主役は一切の無駄が削ぎ落とされ、極めて洗練されたバッキング・トラック&美メロであり、彼女の歌声はその引き立て役を担っている。そんな絶妙なバランス感覚を評価し、ハイレベルなエントリートラック数点の中から本作品を選抜した。
GadgetSonicは今年で6年目。”Day by Day” という曲名通り、大会もこのトラックメーカーも歩み続ける。
087:あこぎ屋別館「Skyscraper」
選評:ゴリッとしたビートにロック魂を感じるベース。起伏に富んだ展開で、実に聴き応えがある。
KORG Gadget「ならでは」の骨太ビッグビート…というより、これはKORG Gadget「でしか」成し得ないサウンドだ。その理由は、コルガジェ自慢の「ゲーミング音源群」が主役だから。
低サンプリング・レートの荒々しさが持ち味のセガ音源 “Otorii” のドラムに乗せ、曲全体を支配するディストーション・ギターは、なんとアーケードゲーム「アフターバーナー」(1987年)のそれ。これまた太っといエレキベースも、タイトー音源 “Ebina” のプリセットと思われる。
これらFM&PCMサウンドの隆盛は80年代後半に遡る。それが現代のトラックメーカーから支持され、今も生き生きとした輝きを放ち続ける。
セガで名曲を生み出し続ける “Otoriiサウンド生みの親” Hiro師匠に、ぜひこの作品を聴いていただきたいです。
042:kubonnu「Ship of Theseus」
選評:この作品もまた、KORG Gadgetだからこそ生まれたトラック。8/8、15/16、17/16…と、ここまで柔軟に変拍子を扱えるDAWはそうそうない。まさに変幻自在。
そんな美点を武器とし、持ち前のソングライティング能力で勝負するのが本作者…というか、もはやこのエリアでは敵など皆無。ブルーオーシャンで、己のクリエイティブをもって自由に泳ぎ回るのみ。
そんな立ち位置を、これまでの多大な努力により確固たるものにした「コルガジェ界のプログレ番長」。今大会も安定のクォリティーで、見事連続入選を果たした。
199:Moai b「Shalala」
選評:実にクールで大人っぽいジャパニーズ・エレクトロ。音数を抑えたシンプルなトラックに、甘い枯れっぷりが何ともセクシーな男声ボーカルが乗る。
ファンキーなベース、バリエーション豊富なドラムフレーズ、ジェントルかつクリアなバッキング、絶妙なサンプル遣い…どの要素も非常にクォリティーが高い。
そんな上手いミュージシャンの手にかかり、そのスキルを受け止め切るKORG Gadgetもまた、いい仕事をする。そんなことも再認識させられた逸品。
118:WARYU「after the fest」
選評:「祭りの後」と題されたヒップホップ・トラック。リリックはないが、なぜかいつも、この作者が紡ぎ出す音を聴くだけでエモーショナルな気分にさせられる。一体どう訓練すれば、こんな音を出せるのだろうか。
答えはおそらく、これまで歩んできた作者の人生経験にあるのだ。まるで己の生き様や情念を刻むが如く、ピアノロールにノートを、一音一音刻み込んでいるのだろう。
人生は喜びと苦難の連続。酸いも甘いも噛み分けてきたトラックメーカーゆえ到達した「侘び寂び」の境地。
038:Kacleminov「Keep in twilight」
選評:ヨーロッパの薫り漂う、この上なくストイックなテクノ。
このトラックから感じるのは、自分を表現すること以上にホールのお客を踊らせること。本作からは、そんな一流バーテンダーのようなサービス精神、献身さをも感じてしまう。
それゆえ曲を支配するのは、淡々と四つ打ちを刻む大黒柱キックと、フィルターをパカパカさせながら暴れ回るアシッドベースのみ。そこに時折アクセントとして、申し訳程度のフレージングと女声ボイスが混じる。
週末深夜、コンビナート地帯から空港を結ぶハイウェイを駆け抜けながら、カーステレオでかける曲。それが、この曲の楽しみ方かもしれない。
167:Kaichirock「Can’t go out」
選評:今大会では珍しいHyperPopに、これまた少ない印象のチップチューン風味を加えた作品。
Abu Dhabiでスライスしたブレイクビーツとブンブン歪むガバキックをボトムに、分厚いブラス系パッドやファニーな電子音、チャーミングなボイスサンプルがトラックに彩りを添える。
そして映像表現も斬新。曲の進行状況と同期したiPhone版KORG Gadget上で、VRキャラが踊る動画は見ていてとても楽しい。これからはトラックメイク技術に加え、こうした「映える」映像制作スキルを兼ね備えれば、アーティストとして大きな強みになるのだろう。極めて今日的な総合芸術だと感じ入った次第。お見事!
🌴 GREEN FIELD 🌴
🔥 RED STAGE 🔥
🏅 SONIC MEDAL🏅