GadgetSonic 2024 グランプリ作品発表
KORG Gadget
COMPOSITION COMPETITION
GadgetSonic 2024
🌊 BLUE WATER LAKE 🌊
👑 BEST OF SONIC 👑
001|Kaseki Hunter “Timer”
選評:一週間の予告期間を経て、GadgetSonic 2024が開幕した瞬間にエントリーされた「時」をテーマにした作品。
「音楽はイラストなどと違い、聴く人の時間をいただくもの。だからせめて”3分計れる”実用性を持たせた曲を」とは作者の弁。
そんな「曲の機能」以上に驚くのは、この曲を聴きながら流れる3分間が、びっくりするほど早いこと。
BPM120で刻まれるタイトなリズムに乗せ、要所であしらわれるシックなSEに、アナログシンセによるアブストラクトな装飾音。そして突然訪れる、美しくたおやかなサビの旋律。
聴けば聴くほど技術的な発見もあり、この曲が練りに練られて作られたことに気付かされる。それをサラリと聴かせるセンスが最高に粋。
そんな起伏に富んだ3分間は、めくるめく音楽の詰め合わせ。リスナーを決して飽きさせることなく、あっという間に時が過ぎる。今すぐカップラーメンを食べたければ、この曲を流しながら待つと良い。
コルガジェ・シーンきっての実力者であるKaseki Hunterさんの集大成であり、最骨頂。
満を持してのグランプリ受賞、おめでとうございます。
KORG Gadget
COMPOSITION COMPETITION
GadgetSonic 2024
🌊 BLUE WATER LAKE 🌊
🎖️ SONIC OF THE YEAR 🎖️
144|xxkadotani “揺らぎ“
選評:GadgetSonicは、回を重ねるごとに「ボーカル曲」のエントリーが増えている。
このところコルガジェ界隈にて盛り上がりを見せるラップをはじめ、エッジの効いたギターを奏でながらの歌唱、果てはボーカロイド作品まで。
そんな中、ガジェソニ黎明期よりエレクトロ・ポップ一本で勝負してきたxxkadotani さんが、またしても名曲を送り出してきた。
今大会は2作品のエントリー。どちらも素晴らしい出来で悩ましいが、本作「揺らぎ」を入選作とした。
シンセサイザーによる浮遊感溢れるフレーズを、音数を最低限に抑えた巧みなリズムに乗せ、エモーショナルなリリックが紡がれる…そう、この曲最大の魅力は、作者にしか表現できない力の抜けた気だるさだ。
あらゆる要素が有機的に合わさり、まるで宮沢賢治の物語を彷彿とさせるような音世界が構築されている。そんな技巧を超越した精神性も評価し、この位置での入選作とさせていただいた。
157|八岐大蛇 “2024“
選評:毎大会、ユニークかつ摩訶不思議な作風でリスナーを楽しませてくれる八岐大蛇さん。
今回は、思いっきりテクノ・ポップに振ってきた。しかし一筋縄で行かぬのは本作も同様で、かつてのニューウエーブに通づる「捻じくれ感」が実にキュート。
一番の聴きどころは曲展開のカラフルさだが、黄色から一気に緑へ変わるのではなく、レモン→甘夏→ネーブル→はっさく→金柑…ときて、最後レモン色に戻るといった具合。それでいて決して一本調子にならないのは、巧みな音の出し入れと芳醇なコード感が効いているからだろう。
卓越したテクニックをもちながら、ユーモアあふれる独自の世界を「けろり」と表現。そんな底知れないセンスが八岐大蛇さんの大きな魅力。その魅力は、今大会でも十二分に発揮された。
209|potatomahawk(ぽてまほ) “Dazzlingly Disaster”
選評:GadgetSonic過去6大会で2度のグランプリを果たした、コルガジェ・シーン屈指の才人ぽてまほさんによる待望の新作。
作者持ち前の煌びやかなポップセンスと疾走感、高度な音楽性に裏打ちされた重厚感は今作でも健在。
それに加えて、本作では「激しさ」をも纏う。無数のノートがほとばしるトラック・メイクは、どこかスピリチュアルさをも感じさせる。
曲中盤で訪れる圧巻のドリルンベースを経て、嵐の後には美しい静寂で幕を閉じる…そんな物語性に富む本作は、コントラストの強い二面性を持つ大作だ。
今大会は惜しくもGPに至らなかったものの、目覚ましいスキルを余すことなくトラックに注ぎ込むぽてまほさんが、ガジェソニ参加者の頂点に君臨するのは揺るぎようがない。
これからもシーンを牽引する名手として、さらなるご活躍を心より期待します。
077|mistyminds “いのちのリズム(4GadgetSonic mix) by waryu+mm”
選評:GadgetSonic 2024における大きな潮流として、ラップや語り、ボカロといった、「オーディオトラック」を駆使した歌唱作品が目立つことが挙げられる。
2021年大会でグランプリに輝いたmistymindsさんもその一角だが、本作品ではコルガジェ・シーンのもう一つの潮流「共作」が行われたことも興味深い。この曲ではピアノとボーカルをchakiさんが、それ以外のトラックをGadgetSonic2024参加者でもある和龍さんが担当し、mistyminds名義でエントリーされている。
作曲は、本来孤独な創作活動。ましてやガジェソニのようなインターネット・コンペでは尚更だろう。
ところが今のKORG Gadget界隈は、DTM業界において特異とも言える、実に盛んなコミュニティーが育まれている。大会外ではコルガジェ・ユーザー同士によるコラボ作品がリリースされ、今大会中においては他作品に対するリスペクト作品まで誕生した。
本作「いのちのリズム」は、抒情的な語りやコーラス、ピアノ、ギタープレイといった曲そのものの美しさもさることながら、新たな潮流「コルガジェ・ユーザー間による創作の広がり」を生み出していることにも敬意を表し、入選作とさせていただいた。ある意味、本大会を象徴するトラックと言えるだろう。
092|yonasata “bamboo shoots”
選評:ガジェソニでは珍しい、ラテンのムードに溢れた逸品。
この曲の持ち味は、ジャマイカの海と青空を彷彿させるノリの良さと、ストレートに「良い曲!」だと感じさせる小粋さだ。
何気ないようでいて、トラックにこの雰囲気を醸し出すのは至難の業だが、やはりグルーヴ感あふれるベースラインとビートがキモなのだろう。
そんな確かなボトムスに軽快なブラスのノリが加わり、要所をシンセで締める確かな構成力も相まって、myプレイリストに入れて繰り返し聴きたくなるような曲が生まれた。
作曲者であるyonasataさんはGadgetSonic初参戦で、いきなりの入選を果たした。おめでとうございます!
013|pokoshi “Wave Connector“
選評:こちらもガジェソニ初参戦となるpokosiさんの作品。応募3作品はどれもハイクォリティーだが、一番最初のエントリー作”Wave Connector”を、今大会随一の「胸キュンソング」として選ばさせていただいた。
柔らかなシンセとピアノフレーズが印象的な、底抜けに爽やかなインスト・ポップ。曲のどこを切り取っても「ときめき」を禁じ得ない旋律が美しく、それを支えるベースラインも秀逸。心踊らされっぱなしの4分37秒間。
ちなみに作曲者であるPokoshiさんは、今年6月にKORG Gadgetを使いはじめたばかりとのこと。とはいえピッチベンドを要所で決めてフレーズに表情を出すなど、コルガジェを完璧に使いこなしている。
大会7年目を迎えたガジェソニから、またしても新たな名手誕生の予感。今後のご活躍に期待したい!
229|Tesigar “Andromeda“
選評:GadgetSonic初参戦3人目は、Tesigarさん作のシンセサイザー・ミュージック“Andromeda“。
一聴するとシューティング・ゲームのBGM風で、旋律も音色も明るくカラッとしている。しかし、いつの間にかグッと胸に迫り、魂を揺さぶられるような表情を併せ持つ、とても不思議で稀有な曲。
その秘密は、やはりブライト系の音色で奏でられる美しくエモーショナルなメロディー。それらが後半にかけて重層的に畳みかけ、最後にクライマックスを迎えるという巧みな演出力も光る。そうした工夫により、本作は単なるアゲアゲ系にとどまらない魅力を放っているのだろう。
今大会はハイレベルな初参戦アーティストが多く、選者の一人としては悩ましくも喜ばしい限り。これからも頑張っていただきたい!
166|st.fe “High Roller(Respect Sing, Sing, Sing)“
選評:曲冒頭の超絶ピアノ・プレイから作者の実力を見せつけられる。まるで劇伴のような、キャッチーで濃密な逸品。
曲名の「High Roller」とは、カジノで大金をかける人のことだそうで、この人物を取り巻く一貫したストーリー性を感じる。それこそがこの作品の妙味であり、曲を最後まで聴けばオケラになったHigh Rollerの姿が眼に浮かぶだろう。
起伏に富んだバッキングに乗る、フリーフォームに泳ぎ回るピアノ&ブラス系のフレーズ。全体的な技術レベルが極めて高く、かつ最後まで一切の手抜かりを感じさせない。ガジェソニ入賞常連者st.feさんらしい、実にプロっぽい作品だ。
188|kokagemagic “水中呼吸(respiration)”
選評:印象的なタイトルに魅かれて曲をスタートさせると、FMシンセChiangmaiを起用した涼しげなフレーズが聴こえてくる。
その後もこの曲は、ほぼChiangmaiとピアノ、ベースだけで進行する。トラック構成としては、ガジェソニ応募作品中屈指のミニマムさかもしれない。
しかし、音色を絞り削ぎ落としたからこそ、ひとつひとつのメロディーが彫刻のように洗練され、その美しさが際立っているのだ。
誤魔化しようのない状況下において、旋律一本で勝負する。この作品からは作者のストイックさに加え、たしかなスキルに裏打ちされた自信をも感じさせる。
なお、こちらのkokagemagicさんもガジェソニ初参戦組。初っ端からこのクォリティーに、末恐ろしさを感じてしまう。
008|kubonnu “Polar lights”
選評:今大会も入選を果たした、ブルーオーシャンで自由に泳ぎ回る「コルガジェ界のプログレ番長」kubonnuさんの新作。
変拍子が前面に打ち出されたお馴染みの作風だが、本作は幾分あかるく仕上げられ、リスナーにとってより聴きやすくなっている。
KORG Gadgetのストロング・ポイントの一つに、先に述べた「変拍子に強い」ことが挙げられる。iOS音楽制作アプリの中には、異なる拍子を混合できないものがある一方、コルガジェは8/8、15/16、17/16…と、自由に設定することができる。
この曲を聴いて、あなたのトラック・メイキングに「変拍子」という引き出しを加えてみるのも良いだろう。
GREEN EARTH FIELD
FIRE RED STAGE
SONIC MEDAL