GadgetSonic 2025 グランプリ作品発表
KORG Gadget
COMPOSITION COMPETITION
GadgetSonic 2025
🌊 BLUE WATER LAKE 🌊
👑 BEST OF SONIC 👑
044|Yakumo “Stockholm Syndrome”
選評:複雑で緻密なビート。唸りを上げる高速ベース。それらと交錯する美しいフレーズ……。
KORG Gadgetのループマシン名を冠する本作は、その威力を極限まで活かしたブレイクコア・トラックだ。
曲の冒頭から手数の多いビートに圧倒されるが、1音1音丁寧に練られているせいか、非常に耳馴染みが良い。
そして圧巻なのは、1:13過ぎからの劇的な流れ。大胆なテンポチェンジを経て、リスナーをいきなり別次元へと誘う。
フィルターでシーン変わりを強調し、タイムストレッチをかけつつピッチを下げるなど、配慮の行き届いた工夫も光る。
トラックのボトムを支えるベースも強烈で、「ここぞ」というシーンで一気に主役に躍り出る。このあたりも本作の鮮烈さに一役買っている。
全編において一片の隙のない完璧な構成力。卓越したスキルによって、KORG Gadgetのポテンシャルがずるりと引き出された大傑作。
そんな極めて充実した本作を、この夏のBEST OF SONICとさせていただいた。
KORG Gadget
COMPOSITION COMPETITION
GadgetSonic 2025
🌊 BLUE WATER LAKE 🌊
🎖️ SONIC OF THE YEAR 🎖️
085|st.fe “Song Bird”
選評:惜しくもBEST OF SONICを逃した本作もまた、過激なビートが刻まれるドリルンベース・トラック。
しかし、この曲が世のドラムントラックと一線を画し、唯一無二の輝きを放つのは、どこかノスタルジックな「枯れた」味わいにあるだろう。
本作の主役は、小鳥のさえずりのような美しい旋律と、情感をたたえたピアノプレイだ。
パート構成としては、高速ビートとストリングス、それにピアノ。低音を司るパートが存在しないのも、この作品をユニークな存在に押し上げていると感じる。
毎大会趣向を変え、ハイレベルな作品を世に送り出す才人。年一回とおっしゃらず、今後もますますのご活躍を期待します。
237|Taiki overthere “Quest For FIRE”
選評:作者自らの演奏によるバンドサウンドに乗せ、アブストラクトなリリックが静かに、時に激しく紡がれるボーカルトラック。
サビのメロディーがなんとも感傷的で、夏の終わりの一抹の寂しさを禁じ得ない。
打ち込みよりも即興的な多重録音をメインに据え、作者の生き様を刻みこむような歌唱が相まって、このような独特の響きを纏うのだろう。
モバイル音楽制作アプリKORG Gadgetが秘める可能性、そしてGadgetSonicに集う音楽の振り幅を示す名作として、この位置での選出とさせていただいた。
033|yorozulabel “oriental”
選評:コミカルなタイトル&ジャケットよろしく、夏らしいお祭りっぽさがあふれる作品。
シタールが主役でユーモラスな一方、リズム隊は小粋でグルーヴィー。音楽としてのクォリティーが極めて安定しており、どっしりと聴かせてくれる。
それでいて、このような肩の力が抜けた作風はガジェソニでは珍しい。作者の力量のみならず、どこか余裕や、人柄をも伺わせるトラックさばきだ。
ぜひ汗をかきつつ、夏野菜カレーを食べながら聴きたい。オリエンタルでエキゾチックな音楽を楽しもう!
228|pokoshi “Reminiscence”
選評:ツーコードだけで制作された、涼やかでしっとりとしたインストゥルメント・トラック。
構成だけを見るとシンプルな印象だが、ピアノやフルート系による技巧的な演奏と、不意に顔をのぞかせる美メロがたまらない。高度なテクニックに裏打ちされた、なんとも魅惑的な作品だ。
誰が聴いてもリラクゼーションを感じる音楽であり、実際にリラックスを目的としたアレンジが随所に施されている。
アーティストであるのと同時に、リスナーに寄り添い夢の世界へ運んでくれる演出家。そんな作者の創作姿勢に敬意を表し、優秀作とさせていただいた。
076|Penguin Robot “Botanical Garden”
選評:GadgetSonicではあまり見られない、グリッチノイズを前面に押し出したエレクトロニカ。
楽譜で表すようなフレーズを最低限とし、パターンに少しずつ変化を与えながら、ノイズのループが折り重なる。
やがて聴き込んでいくと、恐ろしいほどの手数が加わっていることに気づかされる。デジタルサウンドでありながら、熟練職人によって丹念に編み込まれた民芸品のようだ。
聴く人を選ぶ音楽ではあるが、ハマるリスナーであれば、本作のもつ美しさに陶酔感を覚えるだろう。
芸術性の高い音楽を出展する作者の才気と、そんな才能が集うガジェソニの懐深さを、改めて再認識した次第。
220|xxkadotani “Recollections”
選評:晩夏の空気感をはらんだバックトラックに乗る、アンニュイな歌声が魅惑的なボーカルトラック。
実に大人っぽく、洗練されたサウンドは作者の持ち味。エモーショナルかつキャッチーであり、たまらぬ魅力を放つ。
特に、リリックをメロディーに変換させるセンスがユニークで、本作の聴きどころでもある。
音の配置の仕方やミックスバランスも申し分なく、心地よく聴ける。ガジェソニからまたしても、語り継がれる名曲が誕生した。
071|mistyminds “The Future is Bright”
選評:KORG GadgetのFMシンセChiangmaiを活かした、星の瞬きのようなリードが印象的なエレクトロポップ。
全編においてシンセサイザーが大活躍。ベースマシンChicagoによるアルペジオの活用や重厚なシンセパッドなど、一聴してコルガジェで作られた曲だとわかる。
昨今のGadgetSonicはアプリの進化に伴い、EDMの枠を超えた様々なジャンルがエントリーされている。ただ、ガジェソニはKORG Gadgetユーザーの祭典。本作のような「コルガジェらしい」ストレートでキャッチーな音楽は、個人的にとても引き込まれる。
曲全体からポジティブな力強さがみなぎり、見通せない未来に明るい光を灯してくれている。本作は、そんな心温まるグッド・ミュージックだ。
122|ウサギのピョンヤン “1000年後に君が生まれた街”
選評:KORG Gadget for Nintendo Switchで制作された、ポップなエレクトロチューン。
タイトルの付け方といいビジュアルセンスといい、独自の世界観を持つ作者。音楽性に関してもユニークで、シンセサイザーの宝庫KORG Gadgetの強みを存分に活かす作風だ。
なお、本作者は11曲のエントリーを行っているが、どの作品も高水準であり、インストゥルメント・ミュージックとしての完成度が極めて高い。
本作に限らず他の楽曲も、ぜひエントリー・プレイリストで聴いてみよう。
058|Taisuke Yasuda “Third Kind”
選評:真夏の夜のムード漂う、ストレートなテクノミュージック。
絶妙な4つ打ち加減から脇を固めるシンセフレーズまで、すべてにおいて盤石なトラックメイクで快適に聴ける。深夜のドライブ中にかけると、さぞ心地よいことだろう。
特に曲の中盤以降、満を持して割って入るリードメロディーが効果的。このあたりの「タメ」を仕掛けているのも、本作の味わい深さにつながっている。
派手さこそないものの、作品として非常にハイアベレージ。大人の侘び寂びを感じさせる逸品だ。
236|Dita Leonhardt “電盆2025”
選評:SONIC OF THE YEARのトリを飾るのは、真夏の終わりにふさわしい「サイバーボンダンス」。
笛をMarseille、太鼓と手拍子をTokyo&Recifeが担当。そこにアシッド感あふれるベースマシンが入り、祭り囃子でありながら異様な雰囲気を醸し出している。そんな作者独自の世界観を高く評価し、入選作とした。
なおGadgetSonicでは、昨年大会からルーキー枠「だれでも自由研究部門」を併設しているが、本作者はルーキー部門が輩出した初の入選者となる。
リリースから10年以上経過したKORG Gadget。そのユーザー層は、今も着実に拡がっている証左といえるだろう。
🌴 GREEN EARTH FIELD 🌴
🔥 FIRE RED STAGE 🔥
🎖️ SONIC MEDAL 🎖️