KORG Gadget
COMPOSITION COMPETITION
GadgetSonic 2026
🌊 BLUE WATER LAKE 🌊
👑 BEST OF SONIC 👑
058|Penguin Robot ”Breathing Space”
選評:長きにわたりコルガジェシーンに君臨してきた屈指の名手Penguin Robotさんが、満を持してグランプリを獲得した。
今大会もスキルフルな3トラックをエントリーしたが、本作は一貫してインテリジェンスなシンセサイザー音楽を基軸におく作者が放つ、真骨頂のチル・ミュージックだ。
とにかくリスナーに「心地よさ」をもたらすため、徹頭徹尾にわたり細やかな計算が施されている。はじめから見ていこう。
まずはこの曲を印象付けるシンセリフから静かにスタートし、すぐにシンセベースが追いかけてくる。どちらも簡素でありながらどこか深みを感じるフレーズだ。その秘密は、タイプの異なるディレイ効果にある。二つのフレーズが溶け合う相乗効果によって、絶妙な味わいを生み出している。
1:47頃からにじり寄ってくるシンセリフも、フィルターを開閉させつつ空間的な動きを与えている。
そして訪れる、揺らぎのあるビート。各パーツの発音タイミングをやや後方にずらすことでタメを作り、グルーヴに独特のフックを与えている。
このようにして作者は、卓越したプログラミング技術を駆使し、素のサンプルを「育てている」。
一つ一つのパーツはシンプルだが、精緻に凝らされた数々の工夫と細やかな配慮により、深い味わいのチル・ミュージックに仕上げられている。さながら、畑や海から採れた素材を、確かな包丁さばきと絶妙なさじ加減で極上のコース料理に仕上げる一流シェフのようだ。
派手さはないが奇をてらわず、直球勝負で仕上がった本作。
コルガジェシーンにおけるテクノ勢の健在ぶりを示す意味でも、嬉しいBEST OF SONICとなった。
KORG Gadget
COMPOSITION COMPETITION
GadgetSonic 2026
🌊 BLUE WATER LAKE 🌊
🎖️ SONIC OF THE YEAR 🎖️
134|Nem ”Psychokinesis““
選評:疾走感あふれるドラムンベース・トラック。都会の夜を駆け抜けるような、ムード満点の作品だ。
怪物の咆哮(ほうこう)を彷彿とさせるアブストラクト・サウンドと、ダークでありながらお洒落で洗練されたシンセサイザー・サウンド。これら相反する要素が渾然一体となり、一つの作品として見事にまとめ上げられている。曲後半に一度だけ登場するシンセソロも非常にキャッチーだ。
本作はアウトロの余韻を含めて2分54秒という短さだが、あらゆるアイデアが濃縮された密度の高い時間を味わえる。むしろ、その短尺さが功を奏し、より勢いのある作品に仕上がっている。
サウンド面では、音像のボトムで唸る低域をはじめ、全体のバランスが非常に優れている。これを外部プラグインに頼らず、KORG Gadgetのみで完結させるミックス・テクニックは大会屈指と言える。
さすがは2025年大会のグランプリ作家Nemさん、ほとばしる才気はこの夏も健在だ。この若きトラックメイカーが、これからもコルガジェシーンに君臨し続けてくれることを切に願う。
062|Swenzy Kong Yosh ”氷菓”
選評:メロウでリラックス感あふれるトラックと、真夏の気だるさを帯びたAIボーカルが織りなすLo-Fiヒップホップ。
制作手法としては、まずKORG Gadgetでトラックを完成させ、その世界観に合うボーカルをSuno AIに生成させてWAVデータ化し、KORG Gadgetのオーディオトラックに重ね合わせる、というプロセスが採られている。
ここで特筆すべきは、本作の核心があくまでKORG Gadgetによる作曲にあり、AIボーカルはその結果として生まれている点だ。つまり、楽曲の骨組みとなる作曲行為そのものに生成AIは使われていない。
そのトラックメイクにフォーカスすると、さすが「ガジェソニV2」の作者というべき最先端の仕上がりだ。トレンドのチルホップをベースに、重厚かつ気だるいベースラインが楽曲を牽引し、細部までこだわり抜かれたビートが心地よいグルーヴを生み出している。間奏で響く、きらめく光彩のようなサウンドも作者ならではの持ち味であり、実にエモーショナルだ。
このハイクオリティなトラックに、語りかけるような英語のボーカル、楽曲にマッチした美しい生成AI映像が融合することで、唯一無二の世界観を持つオリジナル作品へと昇華されている。
ボーカロイドからSynthesizer V、そしてSuno AIへと、常に新しい技術への挑戦を止めないSwenzyさんは、コルガジェシーンにとってかけがえのない存在だ。これからもシーンに新たな息吹をもたらしてくれることを期待したい。
105|xxkadotani ”De-Fusion”
選評:ゴリっとした生弾きのベースと甘いボーカルが特徴的な、メッセージ色の強いオルタナティブ・ロック。
この曲の持ち味は、KORG Gadgetのオーディオトラックを巧みに活用した楽器演奏と歌唱にある。そこに曲全編を淡々と刻むドラム・ガジェットと、隠し味としてのシンセ・ガジェットが絶妙に構成されている。
聴きどころは、曲中に仕込まれた短めのトーキングパートだ。この演出が、本作に深いストーリー性をもたせつつ、楽曲の世界観を決定づけている。
そして、ヴァースの後に続くサビで歌われる、伸びやかで美しいメロディーが圧巻。スケールの大きな浮遊感をたたえ、聴き手を心地よい空間へと誘ってくれる。
選者としては、ボーカルパートの存在感を音量に頼るのではなく、xxkadotaniさん持ち前の魅力的な声質によって高めている点に、そこはかとない「粋」を感じてしまう。
こうした名曲を毎大会リリースしてくれる作者の才能と真摯な姿勢に、改めて敬意を表したい。
049|Sad Juno “What Cannot Be Taken Away”
選評:ドスの効いたボトムスパートに乗る「ダンスダンスダンス」のリフレインが強烈な、ファンク・ミュージック。
そのリフには、KORG Gadgetのメロディー・サンプラー「Vancouver」が曲全編にわたって使われており、プリミティブなパーカッションやサイケデリックな上物パートも相まって不思議な中毒性を放っている。そんな熱気を帯びたグルーヴによって、凄まじい個性と存在感が強烈に匂い立つ。
しかもこの曲が、10年前に発売された「iPhone 7」で作られたという事実に驚愕させられる。とっくにサポートを終えたモデルを今も現役で使い続け、こうして優秀作に選ばれるトラックを生み出し続けるSad Junoさんの姿勢には、大会主催者として頭が下がる思いだ。
019|N.T “きこえますか”
選評:KORG Gadget for Nintendo Switch勢による、今大会屈指の「実験音楽作品」。
曲は「聴力検査」のボタン操作音からスタート。検査用ヘッドホンから鳴るサイン音(Chiangmai?)が右へ左へパンしていくうちに、突如として反復フレーズへと変化し、ポップな電子音楽へと展開してゆく。
無数のボイスサンプルが織りなすコラージュのようなアプローチも見られる本作は、インストとしての親しみやすさと、プログレッシブな芸術性を併せ持つ意欲作に仕上がっている。
また、本作はミュージックビデオとしても作り込まれているが、あえてチープに描かれた手書きイラストやアニメーションが、アングラな世界観に拍車をかけている。
「きこえますか」というタイトル通り、聴力検査という社会イベントから着想を得て楽曲へと昇華させるN.Tさんの創作姿勢は、まさにコンセプチュアル・アートそのものだ。
060|射干玉.db ”Flowers Nine Dub”
選評:涼やかで大人っぽい、ガジェソニでは極めて珍しい本格的なダブ作品。
レゲエの文脈をしっかりと下敷きに、随所でトラックの抜き差しが効果的に行われ、過剰なほどのリバーブやディレイ、フランジャーといったFXが巧みに施されている。
そもそも、KORG Gadgetのような打ち込みツールでダブを展開すること自体が極めてチャレンジングだ。ソングライティング能力はもちろん、エンジニア的な素養も要求される高度な取り組みであり、誰もが容易に真似できるものではない。
そうした高度な制作手法に目が行きがちだが、楽曲そのものも地に足のついたポピュラー・ミュージックとして非常にハイクオリティにまとまっている。ガジェット「Dublin」のベースによる余白を活かした間の取り方や、間奏で顔をのぞかせるシンセパッドの響きも豊潤で、実に美しい。
これまでも幾度となくガジェソニを彩ってきた射干玉.dbことKauさん。深い音楽的知識を持つ作者だからこそ生み出せる、唯一無二の独創的な世界と言えるだろう。
141|Kacleminov ”Colored dots“
選評:小粋でダンサブルなハウス・ミュージック。KORG Gadgetらしい、シンセサイザーとドラムマシンが前面に打ち出されたエレクトロニカだ。
派手さこそないものの、作者のお洒落なセンスが随所で爆発している。メロディーを紡ぐシンセの音色は表情豊かに動き、効果音のようなフレーズや楽曲に彩りを添えるアブストラクトなトラックも心地よい。こうした多彩なアイデアが渾然一体となることで、シックでありながらもカラフルな世界観を構築している。
タイトかつ緻密にノートが配置されたビートもこなれ感にあふれ、実にスタイリッシュだ。
ジェントルなトラック捌きは品性すら感じさせ、もはやプロクオリティの領域に到達している。感度の高いハイブランドのコレクションで流れるBGMとしても、見事にマッチするだろう。
Kacleminovさんにとっては2年ぶりの新作とのことだが、「細々と」などと言わず、これからもますます精力的に活躍してくれることを期待したい。
039|yonasata “A ray of light in the midst of chaos”
選評:ゆったりとしたレゲエをベースに異国情緒を漂わせる、かなりエキセントリックな無国籍ミュージック。
展開や音色使いの先が読めない変幻自在さこそが本作の魅力だ。琴の音色が響き渡ったかと思えば、今度はナイロンギターのプレイが始まったり、パンフルートによるオリエンタルなトラックに、ガジェット「Chicago」のアルペジオを忍ばせたりといった、独特のセンスが光る。
そんな「海外から見た誤解された日本文化」を思わせる、カリフォルニア・ロール的なミスマッチ感こそが、この曲の唯一無二のオリジナリティとなっている。
一歩間違えればバラバラになりかねない奇抜な要素の数々を、レゲエの心地よいグルーヴで一本の太い芯へとまとめ上げる手腕は見事。ジャンルの枠を軽々と飛び越え、聴き手を未知の音楽体験へと誘うyonasataさんの構成力に脱帽する。
025|くぼんヌ。@ジミコスキー “cubic city”
選評:ガジェソニの風物詩。おなじみ「プログレ番長」くぼんヌ。氏が、この夏も新曲を引っ提げてやってきた。
一聴しただけでは判別できないほど複雑なビートでありながら、流れるように自然でスムーズに聴かせてくれる。このあたりの巧みなトラック捌きは、さすが手練れ(てだれ)の職人技といったところだ。
本作のように、KORG Gadgetは5拍子や7拍子といった「変拍子」をかなり柔軟に設定することができる。シーン単位での拍子変更が可能で、効果的に用いることでリスナーの意表を突く斬新なトラックを生み出せる。
変拍子特有の緊張感とポップな聴きやすさを見事に両立させた本作は、まさにKORG Gadgetの持つポテンシャルを最大限に引き出した好例と言える。コルガジェユーザーへの技術的なヒントとしても、ぜひ参考にしてほしい。
162|NS ”Ocelación“
選評:おそらくKORG Gadget for Nintendo Switch勢による作品。
ファンキーなピアノプレイに絡むブラスセクションがスタイリッシュな一方、掴みどころのない不思議さが魅力の本作。どこかカルト映画のサウンドトラックを彷彿とさせる仕上がりだ。
作者であるNSさんに関しては情報が乏しいものの、洒脱で軽妙なトラック捌きが実にカッコいい。ワンショットサンプルの使い方もこなれていて、プロフェッショナルな風格すら感じさせる。
それにしても、曲の終わらせ方が最高にクールだ。フェードアウトに頼らず、一瞬の静寂で幕を引く余韻を味わうためにも、ぜひ最後まで聴いてみてほしい。
🌴 GREEN EARTH FIELD 🌴
🔥 FIRE RED STAGE 🔥
🎖️ SONIC MEDAL 🎖️
