4-4 ベーストラックを作ろう

今回のチュートリアルでは、曲をボトムスからささえ、グルーヴ感にも大きく関わる「ベース」のフレーズを作っていきます。基本的には、前回のチュートリアルで作ったコード進行に基づき、その構成音から音程を選ぶことになります。とりわけメインとなるのは、そのコードのルート音…つまり、コードがC#m7であれば「C#」を使うことです。そして、他のトラックとの兼ね合いを考えながらリズムを作れば、ベースラインの完成です。
今回のチュートリアルで完成を目指すベーストラックです。PLAYボタンをタップするとプレビューできます。
ベーストラック用のガジェットを選ぼう
ベーストラックには、これまでのチュートリアルで覚えてきたドラムやコードトラックとは異なる特徴があります。それは、一度に一音ずつ打ち込むこと。裏を返せば、一度に一つの音しか出せない音源(モノフォニック・シンセ)でもOKということです。
ということで今回は、シンセベースづくりに適したモノシンセDublinを使って進めていきます。

まずは、ベーストラック用のTrack 3を作ります。前のチャプター4-3 コードトラックを作ろうからのつづきです。
現在エディット画面にいる場合は、< Back①をタップしてメイン画面②に移りましょう。




メイン画面にて+ボタン③をタップ。


ガジェット・ブラウザが起動するので、今回はBass / GuitarカテゴリにあるDublin④を選んでください。新たにTrack 3⑤ができます。




Track 3のクリップ、またはガジェットアイコンをタップ⑥し、エディット画面⑦に移ってください。




ベースラインの要素について
これから作っていくベースラインは、リズムとメロディーがポイントとなります。
メロディーについて
メロディーに使う音ですが、このチュートリアルのデモソングで用いている「C#ドリアン・スケール」内であれば、どれでもOKです。


どの音を使うかはセンスやひらめきによりますが、曲作りに慣れるまでは、各コードのルート音である1度①をメインに、3度②と5度③を意識するのが、間違いのないベースラインを作るコツです。たとえばC#m7なら、C#,E,G#の音です。


リズムについて
使う音がわかったら、今度はリズムを考えましょう。コツとしては、ほかのトラックとの兼ね合い…つまり、ドラムビートやコードバッキングのフレーズを意識することです。
まずは基盤となるフレーズをつくり、ノートの長さを変えたりタイミングをずらしたりして、ベースライン作りを楽しんでください!
ベーストラックを打ち込んでみよう
以上を踏まえて、かんたんなフレーズづくりからはじめましょう。
はじめにDublinのプリセットから、シンセベースにふさわしいプログラムを呼び出します。ここではSOUND PROGRAM①をタップし、17. Pick Bass②を選んでください。


ピアノロールをScale On③にすると、このチュートリアルのデモソングで使っているC#ドリアン・スケールの音だけが表示され、便利です。


Drawモード④に切り替えます。今回もステップ入力でノートを打ち込んでいきます。


基本的なフレーズを打ち込む
まずは1 Barにて、こんなフレーズ①を打ち込んでみましょう。この小節のコードはC#m7だったので、とりあえずルート音(1度)のC#だけに打ち込みます。


2 Barに移動②し、同じようにフレーズ③を打ち込みます。2小節目のコードはA#m7(♭5)だったので、ここでもルート音A#に打ち込みます。コードトラックとの兼ね合いで、2.4だけパターンが違うことに注意しましょう。


3 Barに移動④して、このように打ち込みます⑤。ノートの配置は1 Barと同じですが、音程を3小節目のコードD#m7のルート音D#にしています。


そして4 Barに移動⑥して、4小節目のコードG#m7のルート音G#に、こんなフレーズ⑦を打ち込みましょう。区切りとなる4小節目でパターンを変え、アクセントをつけてみました。


これで、基本的なベースフレーズができました!
音程や長さを変えてベースラインに仕上げる
ここまで打ち込んだ1〜4 Barを、そのまま5〜8 Barにコピーしてこのチュートリアルを終えても、一応ベーストラックとしては成立します。しかし、各コードのルート音だけでは少々味気ないので、少しだけメロディアスなベースラインを作ってみましょう。
1 Barのノートを手直しする
まずは、7マス目のノート①を、次のノートまで伸ばします②。こうすることで、ベースラインにメリハリが生まれます。




さらに、ピアノロール上で左へドラッグ③してスクロールさせ、1 Bar 16マス目にあるノート④を、次の2 Bar 1マス目まで伸ばしてみましょう⑤。一味違ったグルーヴ感が出せると思います。




2 Barのノートを手直しする
2 Barへ移動し①、1 Barと同じく7マス目のノートを伸ばします②。




そして2.4にあるノートを、このように変えてみましょう。まず13マス目のノート③を伸ばし、15マス目のノート④をC#3に、16マス目のノート⑤をE2にします。


2 BarのコードはA#m7(♭5)ですから、ここでは1度のA#に加え、3度のC#、5度のEの音を使って、ベースラインを作ってみました。


そして1 Barのときと同じく、16マス目のノートを3 Barの1マス目まで伸ばして⑥、2 Barを仕上げましょう。


3 Barのノートを手直しする
3小節目は、1小節目のパターンを使い回すことにします。ここでもコードの3度と5度の音を使ってベースラインを作りました。
3 BarのコードD#m7にのっとり、D#、F#、A#の音だけでベースラインを作っています。とても楽ちんです。
ここでも16マス目のノートを、4 Barの1マス目まで伸ばしてくださいね。


4 Barのノートを手直しする
ベーストラックの区切りとなる4小節目は、リズムに加えメロディーも派手めに動かしてみました。
4 BarのコードG#m7を構成するG#、B、D#、F#を使いつつ、14マス目にA#を加えました。コード外の音ですがスケール内ゆえ、もちろん使ってOKな音です。





ちなみにA#は、C#ドリアン・スケール6音目の音です。ドリアンにおける6番目の音は特性音といって、フレーズに取り入れるとドリアン・スケールらしい響きが得られる音です。積極的に使いましょう!
打ち込んだノートをBar 5〜8にコピーする
ここまで打ち込んできたベーストラックのノートを、5〜8 Barにコピーします。
過去のチュートリアルで覚えたBarコピー、または全選択コピーで、ササっと済ませてしまいましょう。




ノートを全選択コピー後、5 Barにペーストするときは、2マス目上で長押し→ペーストします。ベーストラックは1 Bar1マス目にノートがないので、1マス目でペーストするとずれてしまうからです。
Bar 8のノートを手直しする
最後にBar 8のフレーズを手直しして、ベースラインの打ち込みは完了です!


ステップ入力の機械っぽさが気になる方は、パラメーターエリアにてノートの音量(ベロシティー)をバラつかせましょう。これはその一例です。
VCFセクションで音色を変えてみよう
ここで、少し新しい操作を覚えましょう。今回選んだプリセットプログラム17. Pick Bassは、ベースにしてはとても明るいサウンドです。モノフォニック・シンセであるDublinのノブ(つまみ)を回して、よりベースらしい音色に加工したいと思います。
シンセサイザーの音色(サウンドの明るさ)を決めるのは、フィルターと呼ばれるセクションです。Dublinでは、VCF(Voltage-controlled filter)セクションのCUT OFFノブで音色を変えることができます。


CUT OFFノブを絞ると、その分高域が削られて音色が暗くなります。ここでは0.67あたりまで下げてみましょう。モコモコした、かなりおとなしいサウンドに変化します。


VCAセクションでキレのあるベースにしよう
もうひとつ、シンセサイザー的エディットテクを覚えて、このチュートリアルを終わりにしましょう。
ピアノ演奏では、鍵盤から指を離してもすぐには音は消えず、余韻(よいん)が残ります。指を離してから音が消えるまでの時間をリリースタイムといいますが、これをなくしてタイトなベースに仕上げます。
シンセサイザーの音量を決めるのは、アンプと呼ばれるセクションです。Dublinでは、VCAセクションのRELLASEノブで、キーオフ後の減衰時間を変えることができます。


RELLASEノブを0まで絞ると、ノートの発音が終わってすぐに音が消えます。


おつかれさまでした!今回はベーストラックの作り方を覚えました。コードトラックで作ったコードに基づき、楽曲のボトムを支えるベースラインを作ることができたと思います。
なお、このチュートリアルの最後で、CUT OFFとReleaseノブで初歩的なサウンドメイクにトライしました。こうしたシンセサイザーの仕組みに興味のある方は、特集記事にて解説しています。ぜひご覧ください!

