エフェクト操作(ガジェット内蔵FX・IFX・マスターFX)
KORG Gadget 3でエフェクト、つまり、サウンドに様々な音響効果を与える手段は、大きく分けて3つあります。
特定のガジェットに搭載されている内蔵FX、トラックごとに用意されているIFX、そしてマスターエフェクトです。
ガジェット内蔵FX | IFX | マスターエフェクト | |
---|---|---|---|
どこで使う? | ガジェットパネル | エディット画面のEffectページ | マスターフェーダー |
メリット | 比較的簡単に効果が得られる | 19種から5つのFXを同時適用できる | 楽曲全体に適用できる |
デメリット | 多くのFXを同時適用できない(Lisbonなど例外あり) | CPUパワーを要する | 基本的にLimiterとReverbのみ※ |
このページでは、KORG Gadget 3で用いられる各種エフェクト(FX)について取り上げます。
ガジェット内蔵FXを使う
一部のガジェットではパネル本体にEffectが搭載されており、これを直接操作することでエフェクトを適用します。
KORG Gadgetのリリース当初から存在するだけあり、デバイスのCPUに負担のかからないエフェクトが多い反面、あまり細かなエディットはできません。ただしこのことは、「簡単さ」「使いやすい」というメリットにもなりえます。
内蔵FXの基本操作を知る
いくつかのガジェットで採用されている汎用的な内蔵FXを使うときは、まずエフェクトタイプを定め、EDIT 1およびEDIT 2の2パラメーターを組み合わせてエフェクトを適用します。パラメーターの効果はエフェクトタイプごとに異なります。
Marseilleの内蔵FX。マルチエフェクターが2系統あり①、25種類あるエフェクトタイプ②を選択します。そしてEDIT 1およびEDIT 2③で効果を定めていきます。
これはMarseilleの例であり、実際はFXの系統数やエフェクトタイプの種類など、ガジェットごとに仕様が異なります。
特にLisbonは、EDMに特化した独自の5FXを同時適用できるという、強力なエフェクトを有します。
ガジェット内蔵FXの種類と、パラーメーターの効果を知る
ここでは、いくつかのガジェットに採用されている汎用的な内蔵FXのタイプおよび効果を示します。
ガジェット内蔵FXリスト
Effect Type | 効果 | EDIT-1 | EDIT-2 |
---|---|---|---|
Bypass | FXを適用しない | - | - |
Peak EQ | 任意の周波数をブーストする | 周波数 | ゲイン |
2Band EQ | 高低2ポイントの周波数をブーストする | 低音域のゲイン | 高音域のゲイン |
LPF | ローパスフィルターで音色を変える | カットオフ | レゾナンス |
HPF | ハイパスフィルターで音色を変える | カットオフ | レゾナンス |
BPF | バンドパスフィルターで音色を変える | カットオフ | レゾナンス |
Comb Filter | 任意の周波数をブーストさせ攻撃的な音にする | 周波数 | フィードバック量 |
Compressor | 音を圧縮して音圧を上げる | 効果の度合い | 効果のかかりはじめ |
Tube Drive | ウォーミーな歪みをもたらす | チューブゲイン | - |
Distortion | 過激な歪みをもたらす | ディストーションゲイン | 音量レベル |
Decimator | ローファイなデジタルサウンドに変える | サンプリング周波数 | FX適用後の音量バランス |
Ring Mod | 金属的な音に変える | オシレータ周波数 | FX適用後の音量バランス |
Talk Mod | ヒューマンボイス的な音に変える | フォルマント | オフセット |
Cho/Flg | コーラス及びジェット的うねりをもたらす | スピード(コーラス→フランジャー効果) | 効果の深さ |
Ensemble | サウンドに深さと広がりをもたらす | 効果の深さ | 効果の広がり |
Phaser | シュワシュワしたうねりをもたらす | 効果の速さ | 効果の深さ |
Auto Pan | ステレオ定位を自動で左右に振る | 移動スピード | 効果の深さ |
Tremolo | 音量を揺らしてトレモロ効果をもたらす | 効果の速さ | 効果の深さ |
Pump | 脈打つような音に変える | 効果の速さ | 効果のかかりはじめ |
Slicer | 音を切り刻む | 効果の速さ | 効果の長さ |
GrainShift | 音を粒々にする | 効果の速さ | FX適用後の音量バランス |
Short Delay | 短い間隔の遅延で金属的な響きをもたらす | ディレイタイム | 効果の深さ |
BPM Delay | テンポと同期したディレイをもたらす | ディレイタイム | 効果の深さ |
Room Reverb | 室内環境らしい残響をもたらす | 部屋の大きさ | 音量レベル |
Hall Reverb | ホール環境らしい残響をもたらす | ホールの大きさ | 音量レベル |
Gate Reverb | ドラムにかけると80sらしい音になる | 響きの大きさ | 音量レベル |
インサート・エフェクトを使う(IFX)
ガジェット独自に搭載されている内蔵FXに対し、トラックごとに用意されているのがIFXです。トラックのミキサーに挿すインサート・エフェクトで、どのガジェットにも適用可能。8バンドEQやコンプレッサーをはじめ、今日的なEDMサウンドには欠かせないサイドチェイン、フィードバック・リバーブといった空間系など、19タイプが用意されています。
KORG Gadget 3からはIFX専用のEffectページが用意され、グラフィカルで直感的なエディットを行えるようになりました。
エディット画面のガジェットパネル左上にあるEffectボタンをタップすると、Effectページに切り替わります。
また、メイン画面のトラックセクション下部にあるIFXボタンをタップすると、Effectページに直接アクセスできます。
IFXは最大5つまで同時に適用できるので、PCのDAW並みの音作りが楽しめます。一方で、あまりに多くのトラックで適用するとデバイスに負荷がかかる印象があります。
デバイスへの負荷でノイズなどの影響が出る時は、トラックをフリーズすると改善できる場合があります。
IFXを繋ぐ順番を知る
インサート・エフェクトは接続順が重要です。不適切な順序で繋ぐと、期待する効果が得られないことも。
一応のセオリーとしては、まずはCompressorで音量の大きさを整えて力強くし、その後EQで調整。最後にReverbやDelayといった空間系FXを挿すと、クリアなサウンドが得られます。
さらに覚えておくと良いのは、後段のエフェクトほど効果を実感しやすくなる点。ちなみにIFXは、上から下へ信号が流れます。
されど奥深きインサート・エフェクトの世界。決して正解はありません。あまりセオリーに凝り固まらず、あれこれ試す実験精神で、あなたにとって最良のサウンドを手に入れましょう。
IFXのポップアップは、ほぼセオリーどおりの接続順で表示されるので参考になると思います!
IFXを繋ぐ順番を変える
IFXページ表示中にFunctionボタンをタップすると上下ボタンが現れ、エフェクトの接続順を変更できるようになります。
なお、ガジェットの音声信号は最上段のスロットに流れ、最下段のスロットからマスタートラックへ出力されます。
IFXの種類を知る
IFXのタイプおよび効果は、次のとおりです。
IFXリスト
Effect Type | 効果 | 系統 |
---|---|---|
No Effect | FXを適用しない | - |
Compressor | 音を圧縮して音圧を上げる | ダイナミクス系 |
Sidechain | ビートを波打たせる | ダイナミクス系 |
Transient Shaper | 音量感をそのままにパンチを加える | ダイナミクス系 |
EQ | 任意の周波数をブースト/カットする3-Band EQ | フィルター系 |
8-Band EQ | 本格仕様の8-Band EQ | フィルター系 |
Filter | 音色に明暗をつける | フィルター系 |
Auto Wah | 周期的な音色変化をもたらす | フィルター系 |
Enhancer | L/R別で音抜けをよくする | ダイナミクス系 |
Exciter | 手軽に音抜けをよくする | ダイナミクス系 |
Saturator | 自然な歪みをもたらす | 歪み系 |
Decimator | ローファイなデジタルサウンドに変える | 歪み系 |
Phaser | シュワシュワしたうねりをもたらす | 変調系 |
Flanger | ジェット的なうねりをもたらす | 変調系 |
Auto Pumper | Sidechain効果をイージーに適用 | ダイナミクス系 |
Pitch Shifter | 音程を過激に上下させる | ピッチ系 |
Delay | 山びこ的な効果を与える | 空間系 |
Reverb | 空間的な響きを与える | 空間系 |
Fb Reverb | 残響音に歪みを加える | 空間系 |
Stereo Imager | 定位感をグラフィカルに表示 | - |
IFXページが小さく調整しづらいので表示を拡大する
iPhoneやiPad miniなどの小型デバイスでは、IFXの調節に支障が出るケースがあります。そんな時はIFXページの何もない所でダブルタップし、拡大表示させると良いでしょう。再度ダブルタップすると元のサイズに戻ります。
マスターエフェクトを使う
マスタートラックでかけるエフェクトがマスターエフェクトです。ここでの効果は楽曲全体に適用されます。
KORG Gadget 3では、マスターフェーダーにReverbとLimiterが搭載されており、さらにラウドネス・マキシマイザーDeeMax(別売課金アイテム)を追加することもできます。
マスターのReverbで楽曲全体に残響感を加える
KORG GadgetはマスタートラックのReverbをトラック全体に適用(Send)でき、楽曲全体を馴染ませる効果が期待できます。
マスターフェーダー上部右側のReverbスイッチをONにし①、その下にあるノブでリバーブの継続時間を定めます②。
各トラックフェーダー上部右側にあるノブで、リバーブ量を調節します。
マスターのLimiterで楽曲全体の音圧感を上げる
マスタートラック最終段にLimiterを適用できます。各トラックの音量のピークを制限値に抑えることで、結果として楽曲全体の音圧感を高めることができます。
マスターフェーダー上部左側のlimiterボタンをONにし①、その下にあるノブでリミッターの効き具合を定めます②。
マスターフェーダーを0dBの位置でリミッティングすることでクリッピングによる歪みやノイズを防止し、安全に楽曲全体の音圧感を高めることができます。
Limiter Depthを上げれば上げるほど、たしかにトラック全体の音圧は持ち上がります。しかし上げすぎるとドラムやパーカッションが他のトラックに抑えこまれ、活き活きとしたパンチ感を失ってしまうことでしょう。
マスターにおけるリミッターは、あくまで補完的に使うことをお勧めします!
マスターのラウドネス・マキシマイザーで楽曲全体の音圧感を上げる
マスタートラックに、別売のラウドネス・マキシマイザーDeeMaxを増設することができます。本体のレバーを上げるだけで、より自然で効果的な音圧アップが実現するガジェットです。
詳しくはこちらのページをご覧ください。
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