ポリシンセ・ガジェットHelsinkiについて。ドリーミーなパッドサウンドを作ろう。
KORG Gadget Helsinki(ヘルシンキ:フィンランドの首都)は、まるでセロファンのように薄く繊細なサウンドが持ち味の、ポリフォニック・シンセ。
シンプルな減算式シンセシスによる、淡く儚いドリーミーな胸キュンサウンドは、KORG Gadget随一。
アンビエントやチルウェイブ系のジャンルを得意とします。
オシレーターから出力に至るまでの経路がわかりやすく、音作りがとても簡単。
初心者の方へ特にオススメできるガジェットに仕上がっています。
"Helsinki"による音作りの流れ
オシレーター
Helsinkiでの音作りも、まず3種類あるオシレーター波形の選択から始まります。
ユニークなのはこの段階で、音域ごとの倍音成分を調節できる点。
地を這うような低音を響かせたい場合はLOWを、存在感のあるキラキラサウンドが欲しければHIGHやHIGHERをブーストさせましょう。
ノイズを足してサウンドをザラッとさせてみてもいいですね。
フィルター
オシレーターで基本的な音の素性を定めたら、フィルターで音色を作ります。
フィルターは2段階のローパスと、ハイパス、そしてバンドパスの4つから選択可能。
カットオフとレゾナンスを組み合わせて調節し、あなた好みの音になるまで追い込んでいきましょう。
アンプ
最終セクションのVCAも、オーソドックスなADSRパラメータで構成。
空間的なパッドサウンドを作りたければ、Attack Timeを思いっきり上げて「ふわっと」音を立ち上げ、余韻を響かせたければRelease Timeで音を長引かせることです。
音を壊して、整える?
まるで8ミリフィルムのようなノスタルジックさを与えたいなら、LOFIという「わざと音を汚す」パラメータも用意されています。
最後にHelsinki専用のリバーブで幻想的に仕上げれば、ヘルシンキ・サウンドの完成です。
各パラメータの説明
Helsinkiでの音作りは、すべてこの1画面だけで完結します。
GENERATORセクション
オシレータ波形を選択したり、帯域ごとの倍音を増減します。
WAVE(Triangle,Saw,Square)
オシレータの波形を「三角波」「ノコギリ波」「矩形波」の3種類から選択します。
LOW(0~127)
「低音域の倍音成分」を設定します。
HIGH(0~127)
「高音域の倍音成分」を設定します。
HIGHER(0~127)
「最高音域の倍音成分」を設定します。
NOISE(0~127)
「ノイズ成分の音量」を設定します。
FILTERセクション
フィルターの種類を選択する等して音色を作ります。
TYPE(LPF12,LPF24,BPF,HPF)
フィルターの種類を選択します。
LPF12
「FREQで設定した周波数より下の帯域だけ」を通し、それ以外の帯域をカットします。
LPF12にしてFREQを下げていくと低域が強調され、「こもった」音になっていきます。
※LPF12とは12dB/octを意味し、LPF24より穏やかなカットになります。
LPF24
「FREQで設定した周波数より下の帯域」だけを通し、それ以外の帯域をカットします。
LPF24にしてFREQを下げていくと低域が強調され、「こもった」音になります。
※LPF24とは24dB/octを意味し、LPF12より急峻なカットになります。
BPF
「FREQで設定した周波数の中央付近の帯域」だけを通し、それ以外の上下の帯域をカットします。
設定したFREQ付近のサウンドを強調させたいときに用います。
HPF
「FREQで設定した周波数より上の帯域」だけを通し、それ以外の帯域をカットします。
HPFにしてFREQを上げると高域が強調され、「か細い」音になっていきます。
FREQ(0.00~10.00)
フィルターの「カットオフ周波数」を設定します。
RESO(0~127)
フィルターの「レゾナンス」を設定し、カットオフ周波数付近を強調してクセを出します。
ENVELOPEセクション
音量変化の度合いを設定します。
A(0~127)
「アタックタイム」(鍵盤を叩いてから最大レベルになるまでの時間)を設定します。このパラメータを上げると、音がふわっと立ち上がります。
D(0~127)
「ディケイタイム」(サスティンレベルに至るまでの時間)を設定します。短くすれば歯切れの良い、長くすればゆったりとしたサウンドになっていきます。
S(0~127)
「サスティンレベル」(音が継続するレベル)を設定します。0 にすると、DECAYで設定した時間に音が消えます。
R(0~127)
「リリースタイム」(鍵盤から離れてから音が消えるまでの時間)を設定します。長くすれば余韻が増していきます。
LOFIセクション
わざとサウンドを汚す時に用いるセクションです。
FREQ(0~127)
設定した周波数付近でザラザラしたエイリアスノイズが強調され、音が粗くなります。
このパラメータに時間的な連続変化を与えると、独特な「シュワシュワ」したサウンドを得られ効果的です。
MIX(0~127)
「エフェクト音とのミックス量」を調節します。
REVERBセクション
Helsinki独自のリバーブです。
TIME(0~127)
「リバーブ・タイム」を設定します。
LEVEL(0~127)
「リバーブ・レベル」を設定します。
OUTPUTセクション
Helsinkiのトータル・ボリュームです。
LEVEL(0~127)
Helsinkiの「出力レベル」を設定します。
"Helsinki"サウンド・メイキングのポイント
Helsinkiはアナログシンセとしてはとてもシンプルな構成で、簡単に音作りを楽しめます。
しかし、その事とのトレードオフで、少しだけ作成可能な音色のバリエーションが乏しい。
プリセット音色が16種類しかないのも、まるでその事実を物語っているかのようです。
そんなHelsinkiがHelsinkiたらしめる、ノスタルジックな音色を作るための強力な武器"LOFI"。
これを使わない手はありません!是非活用しましょう。
またオシレーター部分で倍音成分を調節できるのもユニークですね。
このオシレーターから出る比較的クリーンな音を、いかに汚すか。
これこそがHelsinkiにおけるサウンドメイキングのキモだと思います。
それではまた。Have a nice trip!
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