KORG Gadgetで学ぶ「かんたん」シンセ入門。第4回「アンプで音量を調整しよう」
KORG Gadgetのアナログシンセ"Dublin"で覚える「シンセ入門シリーズ」も、はや4回目。
基本波形と音程を決めるオシレーター、音色を作るフィルターときましたから、今回はフィルターで作ったサウンドの音量を設定するアンプ(VCA:Voltage-controlled Amplifier)を解説します。
Dublin のガジェット・パネル上では、③の部分になります。
VCAの役割は「音量を決める」こと。以上!
いきなり拍子抜けするような見出しで恐縮ですが……事実なので仕方がありません。シンセにおけるアンプの役割は、テレビのボリュームと同じように音量を決めること。これだけです。
となると、本来シンセのVCAセクションには、一つのボリュームつまみがドカンと鎮座するはずですが…DublinのVCAセクションを見てください。
何やら、4つもツマミが並んでいます。しかも、これらはVCAセクション内にありながら、実際はアンプではありません…ってワケが分かりませんよね。これから説明します!
シンセを"楽器"たらしめる「エンベロープ・ジェネレーター」
このVCAセクション内にある4つのツマミ達、一体何者でしょうか?
これらはアンプそのものではなくエンベロープ・ジェネレーター(EG)と呼ばれるモジュレーター・・・つまり、音量を「変調」させる為の連中です。
VCA自体は「音量ボリューム」でしかない
シンセの音作りは、まずVCOで基本波形と音程を決めることから始まり、そのあとVCFで音色を作ります。
そして、いよいよVCAの出番ですが、こいつがやれるのはフィルターから送られてきた音のレベルを決める事だけ。本当に、それだけなんです。
VCAには、音声信号を止める機能すらありません。
鳴りっぱなしの音を止めるだけなら、鍵盤をスイッチにして音をON/OFFすれば良いでしょうが、それではブザーと同じですよね。
シンセは電子楽器ですから、ピアノのように表現力豊かな演奏ができないと困ります。
EGの役割とは?
EGは、そんなVCAに時間的な音量変化をもたらしてくれる存在。
「時間的な音量変化」…小難しい表現をしてしまいましたが、つまりはこういうことです。
たとえば、ピアノの鍵盤を弾くと、その奥にあるハンマーが弦を叩き、音が「鳴り始め」ますよね。
鍵盤を押さえている間は音が「鳴り続け」ますが「徐々に減衰」していき、鍵盤から指を離すと「音が止み」ます。しかし「少しだけ余韻」が残ります。
こうした「カッコ内」の表現を可能にするのが、EGです。
いわば音量を決めることしか能のないVCA君をコントロールするのが、EG君の使命。
シンセが楽器である以上、EGは絶対に欠かせない存在なので、VCAセクションに最初から備え付けられている・・・というワケです。
EGのパラメーターについて
ここからは、EGのパラメーターを覚えていきましょう。
EGは別名、4つあるパラメーターの頭文字からADSRとも呼ばれます。
下の図は、EGにてADSRを設定して生成(ジェネレート)された、エンベロープ波形の一例です。
ATTACK(アタック・タイム)
ATTACKは「鍵盤を押さえてから、音が最大になるまでの時間」を設定します。
0だと鍵盤を押さえるのと同時に音が鳴り、1・2・3・・・とツマミを上げるにつれ「ふわっ」と音が立ち上がります。
ピアノのような切れ味を狙うならATTACKは0がいいでしょうし、パッドやストリングス系は長めに設定すると、ソレっぽくなりますね。
DECAY(ディケイ・タイム)
DECAYは「最大になった音が減衰し、一定の音量になるまでの時間」を設定。「一定の音量」は、このあと説明するSUSTAINで定めます。
木琴などの打楽器系、つまり叩いてからすぐに音が消えるような音が欲しいときは、ATTACK=0、DECAY=極短、SUSTAIN=0にしましょう。
SUSTAIN(サスティン・レベル)
SUSTAINは、音を持続させるときの音量レベルを設定します。ADSRのうち、このSUSTAINだけ音量レベルであることに注目しましょう。他のADRは時間のことです。
SUSTAINを上げると、鍵盤を押さえている間その音量で音が鳴り続き、0にするとDECAYで設定した時間をかけて減衰していき、最後は音が消えます。
RELEASE(リリース・タイム)
RELEASEは「鍵盤を離した後、音が消えるまでの時間」を設定します。「音の余韻を決める」と言い換えても良いでしょう。
RELEASE=0だとキー・オフした瞬間にピタッと止まり、上げると音がゆっくり減衰していきます。
鉄琴のように、叩いた後も響き続く音を作ることができます。
EGは「アンプ」以外にもかけることができます
今回は、シンセサイザーにおいて音量を司る「アンプ(VCA)」について解説しました。
シンセを楽器として弾くにはVCAのみならず、別にエンベロープ・ジェネレーターが必要なことが分かりましたね。
ここで問題。もしEGを、下のように「VCO」や「VCF」にかけたら一体どうなるのでしょうか?
・・・やはり「音程」や「音色」を、時間的に変化させることができるんですね〜。
次回は、シンセに劇的な表現力をもたらす超重要セクション「エンベロープ・ジェネレーター」を用いたサウンドメイクについて、もう少し掘り下げたいと思います。
参考文献
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