KORG Gadgetで学ぶ「かんたん」シンセ入門。第5回「EGで音に多彩な変化をつけよう」

「KORG Gadgetで学ぶ」と題してお送りしている、シンセサイザー入門シリーズ。前回はアンプ(VCA)を取り上げました。

VCAそのものは「音量ボリューム」でしかなく、むしろVCAをコントロールするエンベロープ・ジェネレーター(EG)の解説がメインになりました。
EGに4つあるパラメーター…すなわち、ATTACK(音の立ち上がり時間)、DECAY(減衰時間)、SUSTAIN(持続レベル)、そしてRELEASE(余韻時間)というエンベロープ波形をVCAにかけることで、シンセを楽器のように演奏できます。
EGは、VCAの音に「時間的変化」をもたらす、重要なセクションです。
EGをVCFに接続すると…?
そんなEGですが、実はVCOだけでなく、VCFやVCOにもかけることができます。特にEGをVCFにかけて、音色に時間的変化をつけるのは音作りの王道。ぜひ覚えておきたいテクニックなので、ここで覚えてしまいましょう。
EGの信号をVCFに送るには?
DublinのVCAセクションには、はじめからEGであるADSRノブがあります。

このように、最近のシンセはたいてい、あらかじめVCAとEGが内部的につながっています。
しかし、アナログシンセが生まれてしばらくは、VCFやEG、LFOといった、ことなる役割を持つモジュール同士をパッチケーブルでつなぎ、演奏者がみずから信号のながれを定めていました。
それが、モジュラーシンセサイザーです。

Dublinでも同じように、各モジュール同士をケーブルで繋いで、信号の流れを決めることができます。
Dublinのように、内部で基本的な接続がされていて、演奏者がある程度自由にルーティングできるシンセをセミモジュラー・タイプと呼びます。
EGとVCFをパッチケーブルで接続するには
それでは実際にやってみましょう。まずはいつもどおり、DublinのSOUND PROGRAMで、48:Dublin Initを呼び出してください。

SOUND PROGRAMのすぐ左にある画面切り替えボタンをタップして、PATCHBAY側を点灯させます。

すると、こんな画面が現れます。

この画面は、4つのセクションに分かれています。左からMG 1、MG 2、ENVELOPE GENERATOR、そしてPATCHBAY INPUTSです。
ところで、これからやろうとしているのは、EGとVCFをつなぎ、音色に時間的な変化をつけることでしたね。
ということで、ENVELOPE GENERATORの"EG OUT"ジャックをタッチし、そのままPATCHBAY INPUTSの"VCF"ジャックまでドラッグしてください。

EGのジャックから緑色のパッチケーブルが伸びて、VCFとつながります。
Dublinで音作りをするときは、このようにモジュール同士をケーブルでつなぎ、信号のながれを定めます。
EGをVCFにかけて音色変化させる
EGとVCFをつないだら、さっそくエンベロープをいじってみましょう。
画面切り替えボタンをタップして、SYNTH側を点灯させます。

SYNTH画面に切り替わりました。画面中央にあるVCFモジュールを見てください。

先ほど呼び出したプログラム 48:Dublin Init のVCFは、CUTOFFが全開になっていて、PEAKがゼロになっています。
フィルターが開き切っているので、鍵盤を弾くと明るい音がします。この音は、C2の高さで鳴らしています。
これから作る音色は、明るい音から始まって、しだいにコモっていく感じにしようと思います。
コモった感じにするため、CUTOFFノブを絞ります。とりあえず5ぐらいにしておきましょう。

ついでにPEAKを上げていきましょう。シンセっぽいクセがつきます。

ふたたび画面切り替えボタンを押してPATCHBAY画面に移動し、ENVELOPE GENERATORのAMOUNTノブを上げます。

アマウントは、EGのモジュレーション量…つまり、エンベロープの働き方を調整するパラメーターです。
本来はカットオフとの兼ね合いによってアマウント量を定めるのですが、ここはあまり考えず+3程度にしておきましょう。
ここで、鍵盤を弾いてみてください。
明るい音で鳴り始めて徐々にフィルターが閉じていく、変化のある音色ができました。
この音色変化は、もちろんVCFにかけたエンベロープによるものです。

ATTACK=0なのでスグに明るい音が立ち上がり、DECAY=4の時間をかけてフィルターが閉じていってます。

今度は、ATTACKノブを4ぐらいまで上げてから、鍵盤を弾いてみてください。
すると、CUTOFF=5の「こもり気味の音」から、ATTACK=4の時間をかけてフィルターが開いていき、再びDECAY=4の時間をかけてフィルターが閉じていく…という、起伏に富んだ音色ができ上がります。

このように、エンベロープをVCFにかけると、時間的な音色変化を与えることができるのです。
EGのアマウント値をマイナスにすると?
EGのAMOUNTノブは、エンベロープのかかり具合を「-5 ~ +5」の範囲で設定しますが、マイナスにしたら一体どうなるのでしょう?
実際に試してみると・・・

このように、エンベロープ波形が反転するんですね。

鍵盤を弾くと、こんな音が鳴ります。
鍵盤を押さえてすぐ音がコモり、コモり切ったあと少しずつフィルターが開いて音が明るくなっていく…といった、リバース・エンベロープならではの音色が作れます。
EGをVCOに接続する
最後に、EGをオシレーターとつないで、音程の時間的変化をつけたいと思います。
実際のところ、「ピョ〜〜〜ン」と音程が上下する楽器はなかなかありませんが、一風変わった効果音や、「飛び道具」的なサウンドを作りたい場合に有効です。とても簡単にできて面白いので、ちょっと作ってみましょう。
これまでのエディットをリセットするため、48:Dublin Initを選び直してください。

ENVELOPE GENERATORの"EG OUT"ジャックをタッチし、そのままPATCHBAY INPUTSの"PITCH"ジャックまでドラッグしてください。

ENVELOPE GENERATORのAMOUNTを全開(+5)にして・・・

鍵盤を弾いてみると・・・
「Dublin Init」音色のエンベロープ(A=0・D=3.86・S=0・R=3.94)がVCOにかけられ、「ピュ〜ン」と下がる音を作ることができました。

逆にAMOUNTをマイナスにすると、上昇する音を作ることができます。
エンベロープをマスターすれば「シンセ初心者」から卒業!

今回は、エンベロープをフィルターやオシレーターに適用して、様々な音色変化をつけるテクニックを紹介しました。
EGはアンプにとって絶対に必要で、フィルターにもよく使われますが、オシレーターにまでEGをかけられるガジェットはなかなか見かけません。
ぜひDublinのEGを活用して不思議な音をたくさん作り、あなただけの世界を生み出しましょう!
シリーズ最後の記事は、もう一つのモジュレーション・ソースLFOを紹介します。

参考文献