新ガジェット「Fairbanks」デビュー。シンプル操作で幅広いサウンドメイクが楽しめる、オートモード・シンセ?
KORGは2020年10月13日、ハイクォリティー楽器演奏アプリ KORG Module をアップデート。
今回の目玉は、GarageBand や Cubasis など、他の音楽制作 iOSアプリのプラグインとなる AUv3 対応、そして新作ハイブリッド・デジタルシンセサイザーの投入でしょう。
これで KORG Module に搭載されたインストゥルメントは6つになりました。すべて KORG Gadget でも使うことができますが、この新作シンセについてはガジェット音源 Fairbanks(フェアバンクス)として動作します。
今回は、久方ぶりの新作ガジェットとなった Fairbanks について取り上げます。
リード・パッド・シーケンスサウンド…「振り幅の広い」サウンドが自慢
このFairbanksは、自らをデジタル・ハイブリッド・シンセサイザーと名乗るだけあり、非常に幅広いサウンドが持ち味。
このビデオでお聴きの通り、アナログなウォームパッドから、突き刺すようなシンセリード、キラキラしたFM音色やテンポと同期したシーケンスサウンド、果てはノイジーなキテレツサウンドまでをフォローする、なんとも一筋縄ではいかないガジェットです。あらゆるベクトルのサウンドを網羅する、欲張りシンセいう印象。
筆者としては、モジュレーションを効かせた「アンビエント向けシンセ」としてもイケると感じました。
使うツマミは8つだけ…?Fairbanksの「超簡素な」パネル構成
そんな幅広いサウンドメイクが行える、Fairbanksのガジェットパネルを見てみましょう。
パネル上部に音色エディットを行うためのノブが8つあり、その左にピッチベンドとモジュレーションホイール。下へ行くと、モジュレーション系とアンビエント系のマルチエフェクターが見えます。
そして次の画面は…と行きたいところですが、なんとこれだけなんですね。今までのガジェット音源にない、極めてシンプルな構成です。
しかしFairbanksは記事の冒頭でも紹介したように、バラエティーに富むモジュレーション・サウンドを作ることが可能。なぜこんなに簡素なパネルで、高度な音作りを行うことができるのでしょうか。
その秘密は、プリセット音色を切り替えると、そのエディットにふさわしいパラメーターがノブに割り当てられるというハイブリッド仕様にあります。音色エディットを司る8つのノブですが、パラメーターが固定ではないんですね。
そんなFairbanksの音作りは、ユーザーが欲しい傾向のプリセットを選択することから始まり、それを追い込んでゆくのが基本となります。
美味しいパラメーターに自動フォーカス…まるでカメラのオートモード。シンプル操作で、目的のサウンドを素早く作れる、極めて効率的なワークフローといえましょう。
別売サウンドパックで、音作りの幅を広げることも可能
標準搭載されたプログラム数は30と多くはありませんが、筆者はこれらを、音作りのベースとなる「基本波形」のようなものだと捉えています。
しかし、それでは物足りないという方に向け、エクスパンション・サウンド・パックが2パッケージほどリリースされています。
Hybrid Synth Pack 2は、Fairbanksのプリセットをさらに拡張する、即戦力なパック。
Cinematicは、壮大な響きをたたえたワンショットやドローンが収録された、シネマティックサウンド、そしてアンビエントにうってつけなパックです。
特にCinematicは、これまでKORG Gadgetにあまりなかった傾向のサウンドをもたらしてくれます。手持ちのカードを増やしたいクリエーターは要注目ですよ!
パラメーターが分からなくても何とかなる親切設計。難しく考えず音作りを楽しもう!
今回は取り上げたFairbanksは、これまでのKORG Gadgetのどのシンセにも似ていない、とてもユニークなガジェットに仕上がっていると感じました。あらゆるサウンドスケープを網羅する、良い意味で「ごった煮」的な音源という印象です。
それでいて、わずか8つのノブで多彩な音作りが楽しめる…それゆえ、混乱してしまうこともあるかもしれません。
でも大丈夫。実際このパーシャルなど理論的に結構難しいのですが、そんな専門知識を持たずとも適当にグリグリやるだけで、派手な音色変化が得られます。
簡単操作で目的の音がすぐ手に入る…実にKORG Gadgetらしい、分かりやすく親切仕様な優良ガジェットだと感じました。
今回は、デジタル・ハイブリッド・シンセサイザー Fairbanks を紹介しました。
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