アナログ・モノシンセ・ガジェットBerlinについて。魅惑のオシレーターシンク・サウンドを手軽に。
KORG Gadget Berlin(ベルリン:ドイツの首都)は、「オシレーターシンク」という概念を音作りに用いた、アナログ・モノシンセ。
オシレーターシンクとは、音を出すオシレータの波形周期を、もう1つのオシレータの周期に強制的にシンク(同期)させることで複雑な波形を生み出し、強烈なモジュレーション・サウンドを作ることができる…
…なんて、いきなりムズカシイ話をしてしまいましたが、Berlinの音作りはとってもシンプルなのでご安心を。
とにかくカンタン操作で、ダンスミュージックにハマるリードサウンドを作ることができる、美味しいシンセです!
"Berlin"による音作りの流れ
Berlinは、ひとつのVCOセクションで、シンク・モジュレーションのかかり具合などが設定できるようになっています。
生成できる波形は4種類で、音色のピッチバランスを調節したり、モジュレーションをかける度合いを設定します。
VCFセクションでは、フィルターのカットオフ周波数に対し、「EG」「LFO」「キーボード・トラック」の各ソースで設定したモジュレーションをかけることも。
そしてVCOセクションで音量ボリュームを設定し、最後のDELAYエフェクトでサウンドを整えれば、音作りが完了します。
オーソドックスなシンセ同様、ポルタメント・タイムやピッチ・ベンド量、ビブラートの深さも設定できますよ。
各パラメータの説明
Berlinは、"VCO/MOD"と"VCF/AMP"の2画面で構成されています。
"VCO/MOD"画面
PORTA / BEMD / VIB.セクション
PORTA(0~127)
ポルタメント・タイム。
2つの音を弾いた時に音を滑らかに移行させたい時、その「時間」を設定します。
短いと「ピュン!」、長くすれば「ピュ〜〜〜〜〜ン」と、音の高さが変化します。
BEND(-2.00~+2.00)
「ピッチ・ベンド量」の設定。
鍵盤を弾いている時にBENDスライダーを上げ切ると全音上がり、下げ切ると全音下がります。
VIB.(0~127)
「ビブラートのかかり具合」を設定します。
VOLTAGE CONTROLLED OSCILLATORセクション
PITCH(-24~+24)
オシレータの「音の高さ」を調節します。値が±1変わると半音、±24で2オクターブ分。
WAVEFORM(Triangle,Saw,Square,Pulse)
オシレータの波形を「三角波」「ノコギリ波」「矩形波」「パルス波」の4種類から選択します。
BALANCE(0~127)
このスライダーを上げると、「シンクされる側のオシレータの音量」が上がり、クセのある音になります。
したがって、0にすると、シンクする側だけの出力になり、音がおとなしくなります。
EG1/LFO
EGにすると、「ENVEROPE GERATORセクションで設定された値」でモジュレーションがかかります。
LFOにすると、「LOW FREQUENCY OSCILLATORセクションで設定された値」でのモジュレーションとなります。
MOD(0~127)
このスライダーを上げると、シンクされる側のオシレータに「モジュレーションが深く」かかります。
TONE(0.00~12.00)
「シンクされる側のオシレータのチューニング」を設定します。
このスライダーを上げると、1オクターブ上のミックスバランスに近づき、同時に音色も変化します。
ENVELOPE GENERATORセクション
ATTACK(0~127)
「鍵盤を押してから、ATTACKレベルになるまでの時間」を設定します。
DECAY(0~127)
「ATTACKレベルになってから、音量レベルが0になるまでの時間」を設定します。
LOW FREQUENCY OSCILATORセクション
SHAPE(Triangle,DownSaw,UpSaw,Square,Sample&Hold)
LFOの波形、つまり「音の揺らぎのタイプ」を設定します。
このうちS&Hはサンプルアンドホールドといい、ランダムな不規則波形となります。
FREQ.(0~10)
「LFOで揺らぎを与える周期」(周波数)を設定します。
上げるほど、ゆっくりとした揺らぎとなります。
KEY SYNC(OFF,ON)
オンにすると、鍵盤を押さえるたびに「LFOがリセット」されます。
TEMPO SYNC(OFF,ON)
オンにすると、LFOによる揺らぎの間隔が、「ソングのテンポに同期」します。
"VCF/AMP"画面
VOLTAGE CONTROLLED LOW PASS FILTERセクション
EG 1(0~127)
1画面目にある「EGによる、カットオフ周波数へのモジュレーションのかかり具合」を設定します。
LFO(0~127)
1画面目にある「LFO(低周波発振器)による、カットオフ周波数へのモジュレーションのかかり具合」を設定します。
KBD(-1.00~+1.00)
「キーボードトラックによる、カットオフ周波数の変化量」を設定します。
FREQ.(0.00~10.00)
フィルターの「カットオフ周波数」を設定します。
RESO.(0~127)
フィルターの「レゾナンス」を設定し、カットオフ周波数付近を強調してクセを出します。
VOLTAGE CONTROLLED AMPLIFIERセクション
ATACK(0~127)
「アタックタイム」(鍵盤を叩いてから最大レベルになるまでの時間)を設定します。このパラメータを上げると、音がふわっと立ち上がります。
DECAY(0~127)
「ディケイタイム」(サスティンレベルに至るまでの時間)を設定します。短くすれば歯切れの良い、長くすればゆったりとしたサウンドになっていきます。
SUSTAIN(0~127)
「サスティンレベル」(音が継続するレベル)を設定します。0 にすると、DECAYで設定した時間に音が消えます。
RELEASE(0~127)
「リリースタイム」(鍵盤から離れてから音が消えるまでの時間)を設定します。長くすれば余韻が増していきます。
LEGATO(OFF,ON)
「レガートを設定」します。
オンにすると、音量が滑らかに変化します。
DELAYセクション
TIME(1/64,1/32,1/24,1/16,1/12,1/8,1/6,3/16,1/4,1/3,3/8,1/2,3/4,1/1)
「ディレイタイム(やまびこの間隔)を、ソングのBPMに合わせて」設定します。
LEVEL(0~127)
「ディレイ(やまびこ)のレベル」を設定します。
SPREAD(OFF,ON)
オンにすると、「ディレイ(やまびこ)がよりステレオに広がり」ます。
MASTERセクション
LEVEL(0~127)
Berlinの「出力レベル」を設定します。
"Berlin"サウンドメイキングのポイント
もちろん、音色を決定づけるのはVCFです。
しかし、シンク・モジュレーションを用いるBerlinでは、VCOもサウンドを左右する重要なセクションとなります。
特に"BALANCE","MOD","TONE"の各パラメータは、Berlinによるサウンドメイキングを行う上での鍵となるでしょう。
それぞれの役割を理解した上で、オシレーターシンクを積極的に活用したいですね。
魅惑のオシレーターシンク・サウンドをあなたに!
ここまで読まれてお気付きの方もいるかも知れませんが、オシレーターシンクのシンセはその原理上、「シンクする側」と「シンクさせられる側」の、2つのオシレータで構成されます。
しかしBerlinには、1つのオシレータセクションしかありませんでした。
これは音色作りを簡単にするための、コルグさんによる思い切った「割り切り」設計だと思います。
音作りの幅をあえて犠牲にしたトレードオフとして、初心者でも簡単に音作りを楽しめるようになっています。
一方、ARP ODYSSEYをガジェット化した"Lexington"や、同じくMono/Polyを再現した"Montpellier"(それぞれ、iOSアプリ購入で使用可。Gadget for Macでは標準搭載)であれば、ホンモノのオシレーターシンクが可能。
Berlinに飽き足らなくなった方は、そちらもご検討くださいね。
それではまた。Have a nice trip!
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