KORG Gadget「あなたが欲しい実機シンセは何ですか?」アンケート結果発表!
少し前になりますが、Twitter上でこんなアンケート調査を行いました。
シンセはもとより、ドラムやベース、果てはサンプラーを「ガジェット」と呼び、それらをiOS上で再現する音楽制作アプリ「KORG Gadget」。
アプリとしてのデビュー後も新たなガジェット楽器をリリースし続け、今ではなんと30あまりに達します(2017年11月現在)。
特に、KORG M1やWAVASTATION、ARP Odysseyといった、かつて一世を風靡した「実機」ガジェットがリリースされることから、次にどんなイニシエ・シンセが出るのかはGadgetユーザーにとって関心事ですよね。
そこで、Twitterの投票機能を使って「次に欲しい実機シンセ」をテーマに、アンケート調査を行いました。
リプライ欄では、こだわりのシンセへの興味深いコメントも寄せられましたよ!
「次に欲しい実機シンセ・ガジェット」投票企画
アンケートでは、以下の4択を盛り込みました。
- MS-20
- Polysix
- PS-3300
- その他・他社製品など(リプライでお答えを!)
コルグの王道「MS-20」「Polysix」はスグに決まり、「その他・他社製品」と・・・後の一つは悩みました。
色々考えた末、KORGのアナログシンセサイザーでは究極のレガシーと言える完全ポリシンセ「PS-3300」を選択。
選択肢に入れるにはちょっと苦しいかな?と思いましたが、個人的にどれだけの票を集めるのか興味があったので、選んでみました。
「欲しいシンセ・ガジェット」トップ3
結果は、このようになりました。
KORG Gadgetユーザーに質問!このところ「M1」「ODYSSEY」「Mono/Poly」など実機のガジェット化が相次ぎましたが、あなたが次にリリースしてほしい実機シンセサイザーはどれですか?
— くらんけ✈︎KORG Gadgetブログ (@Gadget_Junkies) 2017年8月25日
Polysixがほぼ1/3を占めて一番人気となり、 ついでMS-20。
PS-3300は少々残念な結果に。
しかし、やはりというか「その他・他社製品」に最も票が集まりました。
1位 Polysix
メーカー | KORG |
リリース年 | 1981 |
シンセタイプ | アナログ |
基本構成 | 1VCO(SAW/PW/PWMの波形選択が可能・サブオシレータ付き)/1VCF/1VCA/1EG |
キーの数 | 61鍵 |
ボイス数 | 6声 |
当時の価格 | 248,000円 |
1位に輝いたのは、泣く子も黙るユニゾン・パッド番長「Polysix」。
発売年である1981年といえば、シーケンシャル・サーキット社の「Prophet-5」(1978年)が、シンセ界を席巻していた時期にあたります。
単音しか出せないシンセが主流の当時、その名の通り「5音」まで同時に発声でき、作成した音色を外部にメモリー可能。
効きのいいフィルターや分厚いサウンドは魅力的で、細野晴臣さんなど数多くのプロミュージシャンに愛用されました。
そんなスーパー・シンセを更に上回る「6音」を出すことができたのが、当時「和製Prophet-5」と呼ばれたというPolysix(ポリ・シックス)。
作った音色データは「カセットテープ」(USBメモリやフロッピー・ディスク以前は、しばしばテープが記録メディアに使われました)にセーブでき、248,000円という価格もあって、たちまち人気を博しました。ちなみにProphet-5は100万オーバーだったらしい…。
音色的には、コーラスやフェイザーなど内臓エフェクトを駆使して作ることのできる、綺麗なパッド・サウンドが持ち味だったようですね。
さて、一刻も早いガジェット化が待たれるPolysixですが、すでにiPad上で完全再現されたアプリiPolysixがリリースされています。
このiPolysix、決してただの音源ではなく、2台のPolysixに6パートのドラムマシン・ステップシーケンサー・ミキサーが搭載された、アプリ単体で動作する「ワークステーション」と言えるもの。
Polysixだけにフォーカスした曲作りも、楽しいですよ!
2位 MS-20
メーカー | KORG |
リリース年 | 1978 |
シンセタイプ | アナログ |
基本構成 | 2VCO / 2VCF / 1VCA / 2EG |
キーの数 | 37鍵 |
ボイス数 | 1声 |
当時の価格 | 98,000円 |
アンケートの2位は、粘りのあるブリッブリなサウンドを出す暴れ馬「MS-20」。
Polysixよりも前の1978年に発売され、コルグを代表するアナログ・シンセになりました。
特徴的なのは、信号の流れをユーザー自らが定める「パッチパネル」。
ケーブルを抜き差しし、試行錯誤を行いながら、あらゆる選択肢に挑戦する世界。まさに「音作りという名の冒険」と言えましょう。
2基あるオシレーターには、金属的なサウンドを生み出すリング・モジュレートをかける事ができ、自己発振によって得体の知れない奇音をもたらすロー/ハイパスフィルターも強烈。
さらには、ギターやマイクを外部入力させてのシンセシスまで可能…と、ユーザーの思いつきをそのまま具体化でき、パッチシンセならではの醍醐味を味わえる名機。それがMS-20です。
さて、KORG Gadgetに最初から搭載されているアナログ・モノシンセ・ガジェットDublinは、MS-20に比較的近い事ができます。
MS-20に比べると簡素なものですが、基本的なパッチング・ワークは十分楽しめますから「幻のMS-20ガジェット」がデビューするまで、Dublinで予習するのもいいですね。
「いやいや、やはり本物じゃないと飽き足らない!」という方は、iOSアプリiMS-20がおすすめ。
iPolysixと同様、単体で曲作りが楽しめるスタンドアロン・アプリなので、よりMS-20にフォーカスした作品が出来上がりますよ。
3位 PS-3300
メーカー | KORG |
リリース年 | 1977 |
シンセタイプ | アナログ |
基本構成 | 48VCO / 48VCF / 48VCA |
キーの数 | 48鍵(別売) |
ボイス数 | 完全ポリフォニック |
当時の価格 | 1,200,000円 |
MS-20のリリースから遡ること1年。「PSシリーズ」というバケモノ・シンセが誕生しています。
MS-20で1音、Polysixでも6音しか同時に出せなかったのに対し、48鍵盤全てにシンセを仕込む事で「完全ポリフォニック」を実現。まさに力技。
ヴァンゲリスや、キース・エマーソンが実際にライブで使用し、YMOも愛用したという名機中の名機ですが、あまりのプロスペック&ファニーな価格(笑)が災いしてか、アンケートではいまひとつ票が集まりませんでした。
正直、ガジェット化は見込み薄かも知れませんが、他社によりVST/AUプラグインとして配布されているようですね。
興味のある方は、お使いのDAWで「マスター・オブ・コルグ」サウンドを鳴らしてみてはいかが?
「圏外」の名機たち!
お待ちかね。「その他・他社製品」に集まった票をご紹介します。
とても興味深いご意見や、当時の思い出話などが数多く寄せられました。
ここからは、実機のリリース順にご紹介しましょう!
RADIAS(2006)
今回のアンケートで投票された実機シンセのうち、もっとも新しいモデル。
「キラキラ感が好きでした」(@HirO__Koizumi)
というご意見どおり、フォルマントやPCM波形が出力できるオシレータ2系統を掛け合わせ、クロス・モジュレーションやVPM(Chieng Maiの音源方式)を絡めたサウンドメイクが持ち味です。
また、RADIASの特徴でもあるボコーダーがとても魅力的。
TRITON(1999)
コルグを代表する、PCM音源を搭載したミュージック・ワークステーション。
高品位かつクリアな音色で、今も世界中のアーティストに愛され続けています。
豊富なオプションボードを駆使し、かつてのコルグシンセ・サウンドやMOSS(物理モデル)音源などを拡張できるのも大きな魅力。
「Triton Extremeにボード載せて使ってましたが、音の重心が低くて、とても重たいシンセベースとか鳴らすと、たまりませんでした!」(たれぞう @mohnishi )
そんな名機TRITONの音色を、なんとKORG Gadgetで扱う方法がありますので、少し脱線しますが紹介しましょう。
KORG GadgetにTRITONの音色を追加する方法
KORG Gadgetユーザーが、モバイル音源アプリKORG Moduleを購入すると、Gadgetに5種類のガジェット楽器が追加されます。
どれもModuleの音色をGadget上で再現したものですが、その中の一つであるマルチ音源「Glasgow」の拡張音色として、100種類のTRITONサウンドを追加することができます。
購入方法は、Moduleを起動し、画面右上にあるStoreをタップ。
Store画面にてTRITON Best Selectionを購入すると、GadgetのGlasgowにTRITONから厳選された100音色が追加されます。
KORG Gadget上で鳴り響くTRITONサウンド。いつか聴いたあの音を、あなたも試してみては?
Z1(1997)・PROPHECY(1995)
この2つも「物理モデル音源」を搭載したデジタル・シンセ。
物理モデル音源は、ヤマハのシンセサイザー「VL1」で初めて採用され、VA(Virtual Acoustic)音源とも呼ばれます。
その名の通り、生楽器の内部構造をリアルタイムに演算することで、実際にある(ない)楽器の音色を作り上げる…という「デジタル技術の申し子」のような音源。
「やっぱり、フィジカルモデリング人気なのか。現行のガジェットでもカバーしてない領域ですから、あるとありがたいんですが。ハードル高いのかなー?(Beatnicster(びー肉と呼んでいいよー) @beatnicster)
確かに、今のiPhoneやiPadの能力では厳しいかもしれませんね。
しかしながら非常に魅力的な音源方式ですから、今後に期待したいところです。
01/W(1991)
KORG M1の後継となるミュージック・ワークステーション。「ゼロ・ワン・ダブリュー」と呼ばれますが、その名の由来は…
開発者たちはM1の10倍いいからM10という名前にしようと提案したところ、社長に「そんな単純な名前では駄目だ」と却下され、M10を逆さまにした01Wとなったという逸話がある。(Wikipediaより)
…だそうです。笑
超独断ですが、01/W希望です!更に手元にある昔のFDデータを読み込めたりすれば、もう思い残す事はありません!(mixrevo7 @mixrevo7)
M1同様、PCM音源を搭載したデジタルシンセにシーケンサーを設け、スタンドアロンで曲作りを行うというコンセプト。
そのPCM波形に、AM変調をかける「ウエーブ・シンセシス」方式で音作りを行います。
PCMの従順さに「過激さ」をプラスでき、音作りの幅が飛躍的に広がりました。
シリーズの一つである「01/Wpro」は、YMOが再結成した時、東京ドームでのライブ(テクノドン)で、3人がメインで使ったようですね。
DS-8(1986)
さて、一気に5年ほど遡りましょう。
今でこそ国内における電子楽器メーカーの雄であるコルグですが、一時期、経営難に陥ったことがあります。
1986年といえば、DX-7に代表される「デジタル・シンセ」全盛時代。
数々の名作アナログ・シンセで一時代を築いたコルグも、デジタルへの出遅れにより、苦しい時期を迎えました。
ヤマハの資本参加による経営再建が行われる中、登場したのがDS-8。
DX-7同様、時代の寵児だったFM音源チップを採用して開発コストを抑えた結果、3年後にリリースしたM1の大ヒットでピンチを乗り越えたのです。
スペック的には4オペレータのFMシンセ(DX-7は6オペ)ですが、142,000円という低価格でありながらタッチセンス鍵盤を備え、ディレイやフランジャーといったエフェクターも装備。
オシレーターはサインウェーブだけでなく、矩形波やノコギリ波をも発生できるユニークな仕様でした。
「その他に投票してみました。マニアックかも知れませんが、KORG DS-8(あるいはKORG 707)」(Tomotan-p @RT_Tomohiro)
DW-8000(1984)
シンセサイザー界にデジタルの波が押し寄せ始める1984年。そんな時代に対するコルグの回答とも言えるのがDWシリーズでした。
その一つ「DW-8000」は8音ポリのデジタル・シンセで、コルグが開発した波形メモリ音源「D.W.G.S」音源方式を採用しています。
通常のFM音源と異なるのは、あらかじめ「倍音加算方式」でプリセットされた波形をオシレーターから発生させ、実際の音作りをアナログ・シンセと同じ「減算方式」で行う点。
いわばデジアナのハイブリッドといったところですが、FMに比べ音作りのバリエーションで劣るため、売れ行きは芳しくなかったようです。
POLY-800(1983)
Mono/PolyやPolysixの後に出た、8ボイスのポリフォニック・シンセ(ダブルモードでは4ボイス)。
プログラマブルでありながら、当時なんと795ドル(!)で販売されていたそうです。
とても軽く、乾電池で駆動し、ショルダー・ストラップでギターのように演奏できるのもユニーク。
MIDI端子を搭載したのも、コルグではこのモデルからとなります。
実は、筆者のマイ・ファースト・シンセでした・・・もっとも、1995年頃にアキバのソフマップMIDIランド買った中古品でしたが。
オシレータはDCOと呼ばれるデジタルのもので、音程が安定するメリットのある一方、音色作成のバリエーションは決して多くはなかったです。
音色作成に際しては、ツマミではなくバリューボタンによるエディットで、やたら面倒だった記憶がありますが、なんとも気の抜けた?音色を出すことができて結構好きでした。
「人生」(電気グルーヴの二人が在籍していたバンド)の楽曲に、よく使われていましたね。
DELTA(1979)
完全ポリフォニックのストリングス・シンセサイザー。
音作りは、オシレーターやフィルターなどアナログシンセの基本的なスペックを持つ「シンセサイザー・セクション」で行いつつ、「ストリングス・セクション」でオクターブのバランスやアタック/リリース、EQなどを設定。
最後に、この2セクションのミックスバランスを整えて音作りを行います。
「実機保有してますが、DELTAなんかも良いかなぁ。」(Tomotan-p @RT_Tomohiro)
う、羨ましい!
実機シンセサイザーのガジェット化に期待!
今回は「KORG Gadgetでガジェット化してほしい実機シンセ」の投票結果をまとめました…なんだか、コルグのシンセ図鑑のようになってしまいましたが。笑
こういったアンケート企画は、これからも続けていきたいと思います。
それではまた。Have a nice trip!
コメント