KORG Moduleが「Pro」へと進化。その中身とは?

コルグは2019年7月18日、高品位モバイル音源アプリKORG Moduleシリーズをリニューアル。
KORG Module Proと装いを新たにし、一方でフリー版であるKORG Module LeをKORG Module(無印)へ名称変更することを発表しました。
これまでのModuleユーザーなら、無償でアップデートできるこのModule Pro。久方ぶりのメジャーアップデートとなりましたが、当記事ではどんな進化を果たしたのか見ていきたいと思います。
KORG Module とは?
私たちKORG Gadgetユーザーにとっても無視できないModuleについて、その理由を含め簡単におさらいしておきましょう。
手持ちのiOSデバイスが「ハイクオリティー楽器」に
Moduleを端的に表現すると、iPhoneやiPadを、ハイクオリティーな楽器に変えるアプリということができます。
アプリ内に準備された楽器は5種類。最高級のグランドピアノや、甘く儚い響きが美しいエレビ、カリッとした軽快なサウンドが印象的なクラビネット、そして様々なモデルをシミュレートしたオルガンは、それぞれ専用モジュールとして用意され、果てはシンセやオーケストラ・サウンドまでを一手に担うマルチなキーボード音源まで搭載されています。
これらの楽器演奏は、iOSデバイスのタッチパネルに表示された鍵盤上でも行えますが、外部のMIDIキーボードや、Bluetoothキーボードを繋ぐと、本物の楽器のように扱うことができます。

基本的にはスタンドアロン・アプリとして、単体で演奏したり、録音するのが目的のアプリであると言えましょう。
Moduleの高品位音源は そのままGadgetで使用可能
そんなModuleですが、私たちGadgetユーザーにとって見逃すことのできないポイントがあります。
それは、Moduleの豊富なサウンド群が、そのままGadgetでも扱える点。
Moduleの楽器は、Gadgetアプリ内においてはガジェット音源として振る舞い、打ち込んだ演奏データ通りに、マルチティンバーで鳴らすことが可能です。
(Module では…) | (Gadget では…) |
グランドピアノ | Salzburg(ザルツブルク) |
エレピ | Montreal(モントリオール) |
オルガン | Alexandria(アレクサンドリア) |
クラビ | Firenze(フィレンツェ) |
キーボード | Glasgow(グラスゴー) |
つまりGadgetユーザーがModuleを導入すると、アコースティック楽器メインのガジェットを、一気に5つもゲットできるわけですね。
その音のクオリティーは極めて高く、たとえばグランドピアノ一つとっても、Gadget標準のPCM音源・Marseilleなどのプリセット音色とはレベルが違うので、それだけでもModuleを導入する価値はあると思いますよ。
上の比較動画では、Marseilleeの「Marseille PIANO」、Salzburgの「Natural Grand」、そして追加ライブラリーである「Ivory Grand」、「Ivory AmD」の順に演奏しています。クオリティーの違いがお分かりでしょうか?
豊富な「別売ライブラリー」で手持ちの音源を拡張できる
先ほど少し触れましたが、Moduleではアプリ内において「追加ライブラリー」を購入する事ができます。
2019年7月時点で、Moduleには12個の別売ライブラリーが存在しますが、目玉は何と言ってもプレミアムグランドピアノIvoryのモバイル版。
また筆者としては、Gadgetに本格的なオーケストラ・サウンドをもたらすKApro Orchestral Dreamsもオススメ。特にストリングスは、オーケストラ・アレンジにはもちろん、ポップスにもよくマッチする使い勝手のいい響きを持ちます。
これらの追加ライブラリーについては、別の記事でまとめてありますので、ご興味のある方はぜひ。

新たにリリースされた拡張パック「Module Performance Expansion」について。
Moduleのあらましを振り返ったところで、このほどアップデートされた内容について見ていきましょう。
まずは今回のリニューアルの目玉である、Module Performance Expansionと銘打たれた拡張パックについて。
追加要素① 異なる楽器の音色を重ねる「レイヤーモード」
Module Performance Expansionは、Moduleのアプリ内で購入可能な追加サウンドライブラリーであるのと同時に、様々なパフォーマンス向けの追加機能をもたらしてくれます。
その一つであるレイヤーは、例えば「ピアノとストリングス」や「バンドブラスとテナーサックス」といったように、別の楽器の音色同士を重ね合わせるというもの。
ModuleのSet List画面にてModeをLayerにし、2つめの楽器の音色を設定してください。
音量バランスの調節やオクターブシフト、ダンパーペダルの有効/無効化といった設定が可能。
このレイヤーモードで音色をユニゾンさせると、より厚みのある、ゴージャスな演奏が楽しめますね。
追加要素② 1つの鍵盤に2つの楽器を並べる「スプリットモード」
レイヤーと同じく、Set List画面にてスプリットの設定も行えます。
別の音色を同時に弾くのがレイヤーなら、一つの鍵盤で別々の音色を弾けるのがスプリットです。
Split Pointスライダーで、音色を切り替える音程を設定しましょう。上の例では、F4より高い鍵盤を弾くとピアノが、それより低いとベースが鳴るので、こんな感じの演奏が行えます。
また、Set Via MIDIをタップした後、iOSデバイスに接続したMIDIキーボードの鍵盤を弾くと、そのキーがスプリット・ポイントになってくれます。
プレーヤーの表現力を、一気に高めることができる機能ですね。
追加要素③ レイヤー/スプリット素材としての音色追加
こちらは、Gadgetユーザーも嬉しいサウンド・ライブラリーの拡張。
サウンド・ブラウザーに、新カテゴリーLayer Elementsが登場。レイヤーやスプリットに最適な62音色がゲットできます。
内容は、ストリングス/コーラス系10音色、ブラス/ウインド系12音色、シンセ系16音色、ベル/マレット系10音色、ギターやハープなど弦を弾く楽器6音色、そしてベース系8音色。
これらは、Module自慢の高品位楽器と組み合わせるレイヤーソースに向くものですが、単体としても非常にハイクオリティーな音色です。
上の動画はKORG Gadgetにおいて、ナイロンギター音色を、PCM音源「Marseille」とModule(ガジェット「Glasgow」)で弾き比べたものですが、ベロシティの違いで弦が擦れる表現など、明らかにModuleの方が繊細な響きを持ちます。
このようなModuleの高品位音色をGadgetでも使える事が、コルガジェ・ユーザーにとってはModule Performance Expansionを導入する最大のメリットとなるでしょう。
追加要素④ MIDIコントローラーでModuleを操作できる「MIDI CC# Learn機能」
KORG ModuleでModule Performance Expansionを追加すると、MIDI CC# Learn(ミディ・コントロールチェンジナンバー・ラーン)が行えるようになります。
これは、iOSデバイスに接続したコントローラーのツマミやスライダーを操作すると、Moduleのツマミ類も同期して動かせるというもの。
より具体的に述べると、モジュール楽器の各パラメーターに、コントロール・チェンジ番号を割り当てる機能です。
やり方は極めて簡単で、コントローラーをiOSデバイスに接続し、SettingsにあるMIDI CCをタップします。
アサインしたいパラメーター(下の例では、E.PIANOのTremolo - Speed)を呼び出して…
コントローラーの、好きなツマミやスライダーを動かすだけ。
これでエレピのトレモロを、そのツマミなどで調節できるようになりますよ。
このMIDIラーン機能は、Moduleを用いたパフォーマンスを行うためには必須だと筆者は思います。
「サウンド・ブラウザー」がブラッシュアップ。
最後に、Moduleの持つ膨大な音色を選ぶために用いる「サウンド・ブラウザー」について、改善点を紹介しておきます。
カテゴリーの見直しが行われ、より直感的な音色探しが可能となりました。
今までサウンド・ブラウザーは、一つの音色は一つのカテゴリーのみに属し、例えばIvoryの音色はカテゴリ「A.PIANO」に包括されていましたが、リニューアル後は「A.PIANO」「Ivory」のどちらのカテゴリーからでも呼び出せるようになります。
ちょっとした改善ですが、サウンド・ブラウザーとしての使い勝手は格段に向上していますね。
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今回は、特にパフォーマンス機能が大幅に強化されたiOS音源アプリ「KORG Module Pro」について取り上げました。
それではまた。Have a nice trip. ciao!