今なお 輝きを放つnamcoサウンド…川田宏行「机上のc30ミュージアム VOL.1」レビュー。
今回は、川田宏行さんの新譜 机上のc30ミュージアム を紹介します。
川田宏行さんは、かつてナムコ(現バンダイナムコ)に所属した作曲家。サウンド・コンポーザーとしてはファミコン「スターラスター」がデビュー作で、その後も「ワルキューレシリーズ」「妖怪道中記」など、数々の名曲を世に送り出します。
二子玉川に存在したテーマパーク、ナムコ・ワンダーエッグの場内音楽監督も手掛けました。
独立後も精力的に作曲活動を続ける川田さんですが、このほど80年代のナムコサウンドを象徴するカスタム音源 c30(カスタムサンマル) にフォーカスしたアルバムをリリースしました。
いにしえの波形メモリ音源c30サウンドを、元ナムコの作曲家が自らリボーン…あらゆる意味で興味は尽きませんが、一体どんな作品でしょうか。
底抜けに明るく時に荘厳…名コンポーザーが生み出す、目眩くサウンド・スケープ。
「机上のc30ミュージアム」は、波形メモリ音源c30サウンドを今なお楽しみつつ、後世に残そう…そんなコンセプトで制作されています。
それゆえ、いかにも当時のビデオゲーム・ミュージックらしい作風。見かけ上は5曲でありながら、1曲1曲に「ゲームスタート」「メインBGM」「エンディング」「ゲームオーバー」といった展開が豊富に用意されていて、リスナーを飽きさせません。ユニークなウェーブテーブル・サウンドを活かしたコミカルタッチなBGMから荘厳な調べまで、実に幅広い。
そして、ナムコ往年の名曲を生み出し続けた「川田サウンド」は、さすがの一言。
キャッチーなメロディーに花を添えるカウンターも味わい深く、制約がなくなった私たちDTMerにとって、少ない同時発声数でゴージャスに聴かせる工夫は、非常に勉強になると思います。ゲーム筐体にコインを入れた時に鳴るクレジット音など、極めて意匠が凝らされたSEも聴きどころの一つ。
そんな滲み出るリスナーへのサービス精神に、プロの職業作曲家としての矜持を感じさせるのは、私だけではないはずです。
いにしえの「ナムコサウンド」が完全再現! KORG Gadget "Kamata" とは?
そんな「机上のc30ミュージアム」ですが、全編においてKORG Gadgetに搭載されたゲーミング音源 Kamata が用いられています。
Kamataは、1980年代にナムコが開発したカスタム音源チップ c30 を完全再現したガジェット。その名は、かつてナムコの本社屋が存在した大田区蒲田に由来します。
シンセサイザーとしては「ウェーブテーブル方式」と呼ばれるタイプ。その硬質かつ分厚い電子音は、ゲームセンター内の喧騒にあっても存在感を放つ「ザ・ビデオゲーム」なサウンドと言えるでしょう。
Kamataは、KORG Gadgetで直接扱えるのはもちろん、別売のプラグイン版 KORG Gadget 2 Plugins for Mac/PC を使うことで、CUBASEやLogicといった他社製DAWでも使用可能。
とりわけAbleton Liveとの相性は抜きん出ており、KORG Gadgetで作ったプロジェクトを「音色情報を含め」完全再現することができます。
デスクトップ上で蘇るc30サウンド。その魅力を堪能しよう。
今回は、川田宏行さんの新譜「机上のc30ミュージアム vol.1」を紹介しました。
机上とはデスク。デスクトップ・ミュージックでc30サウンドを蘇らせるというコンセプトは、実にユニークでした。
そのコンセプト同様にサウンドもユニーク(すぎる)ゆえ、取り扱いもまた難しいc30音源 Kamata。そんな「暴れ馬ガジェット」を今ひとつ活かしきれなかったトラックメーカーにとって、この作品はまたとないお手本になるはずです。
「机上のc30ミュージアム vol.1」は、秋葉原BEEPの実店舗や、通販サイトで販売中。
元ナムコの名コンポーザーの手により蘇った波形メモリサウンド。あの時代を生きた方にとっては懐かしく、知らないあなたにとっては新鮮な音楽体験になるでしょう。
そんなユニークなアルバムを、お手にとってみてはいかが?
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