【KGR #13】無数の音の粒達が、しじまに飛び交う「光の音楽」。 ”Secret Dream – by ayami”

キラキラとした、眩いばかりのバックトラックに乗る、伸びやかでストレートな美メロ。

夜の静寂を切り裂き、疾走する音の粒子たちは曲の最後まで移ろいを続け、リスナーを夢の世界へ誘います。

「KORG Gadget Recommends」今回は、先に開催された#GadgetSonic2019にてBEST of SONICに輝いた一曲 Secret Dream – by ayami をフィーチャーします。

この誰もが魅了されるであろう「光」のような音楽は、どのようにして制作されたのでしょうか?

制作環境について

グランプリ楽曲の作者 あやみ@sleepxnz さんに、制作過程やテクニックなどを伺いしました。

使用デバイスiPhone 8 Plus(DAW:KORG Gadget)
iPad Air 第3世代(DAW:KORG Gadget)
 MacBook Pro 2011(DAW:Logic Pro X)

いずれもApple社製のハードウェアが使われており、Appleデバイス間だからこそ実現する連携機能をフル活用している様子。

iPhoneでリズムから作り始めテンポなども決め、ひたすら色んなガジェットの音を聴きながら曲のイメージを考えていきます。

ここで2・3フレーズ出来たらiPadに移り、全体のバランスを整えながら曲自体はGadgetで仕上げます。

はじめに曲のイメージやモチーフをiPhone上で考え、試行錯誤を経て出来たフレーズをiPadへ持っていき、そちらで本格的なトラックメイキングを行うとのこと。

「お手軽iPhone」「がっつりiPad」という、デバイスの持ち味を活かしたワークフローです。

このようなデバイス間のプロジェクト共有は「iCloud」によって、極めてスムーズに実現します。

マスタリングはAIプラグイン「Ozone」で

iPadで楽曲の組み立てを終えた後は、オーディオデータをMacBook Proへ持っていき、DAW「Logic Pro X」でマスタリング。

Logic Pro Xにマスタリング用プラグインのOzoneElements)を入れてあるので、マスター処理をして完成です!

iZotope Ozoneは、AI(人工知能)による自動マスタリング・プラグイン。適切なイコライジングやバランス調整、音圧上げなどを一瞬で行ってくれる、魔法のようなツールです。

昨今、プロ・アマ問わず急速に普及しつつあり、先ごろ最新版のOzone 9もリリースされましたね。

これら上位バージョンである「Standard」「Advanced」はスタンドアロンでも動作しますが、あやみさんは「Elements」をご使用ということで、Logicのマスターに挿して使っているようです。

とはいえ、

Ozoneをかけても、何も弄らなくて良いくらいまでGadgetで追い込みました。

とのこと…さすが!

トラック・シート

それでは、グランプリに輝いた「Secret Dream」の中身を拝見してみましょう。

このプロジェクトは、20トラック/15シーンで構成されています。

ドラム系ガジェットLondon x1(ドラムマシン)
Recife x1(ドラムマシン)
Gladstone x1(生ドラムマシン)
Abu Dhabi x1(サンプラー)
シンセ/Key系ガジェットMadrid x3(生ベース)
Milpitas x3(デジタルシンセ)
Warszawa x2(ウェーブシンセ)
Glasgow x2(マルチ音源)
Helsinki x1(アナログシンセ)
Chicago x1(ベースシンセ)
Lisbon x1(アナログシンセ)
Ebina x1(FMシンセ)
Marseille x1(PCM音源)
Salzburg x1(生ピアノ音源)

今回はGadgetのコンペなので、なるべく色んなガジェットを使いました

そんなあやみさんのコメント通り、バラエティーに富んだラインアップ。

筆者としては、思いのほかアコースティック系ガジェットが多い印象です。生ドラム音源Gladstoneに、スラップベースや要所のギターなどで計3発も投入されるMadrid、繊細なグランドピアノ音源Salzburgなど。

マルチ音源Glasgowでは、追加ライブラリーKApro Orchestral Dreamsによる、美しいストリングスアンサンブル・フレーズが奏でられます。

そうそう、KApro Orchestral Dreamsは、同じBEST of Sonicに輝いたmgnmgnさんのグランプリ楽曲にも使われていましたね。

個人的には、Glasgowを内包する高品位音源アプリKORG Module Proと、その追加ライブラリーOrchestral Dreamsは、コルガジェユーザーが真っ先に課金すべきイチ押し追加音源だと思います。

※ iOSアプリKORG module Proをインストールすると、Moduleに実装された全5種類の楽器が、ガジェット音源として使えるようになります。

あとは、イントロなどでドリーミーなフレーズを担当するシンセHelsinkiの「はかない音色」が印象的で、控えめながらこの曲のカラーを決定づけていると感じます。

今年デビューしたばかりの「タイトー音源」Ebinaも聴きどころ。サンプルベースとはいえ生粋のFM音源ですから、この曲のキラキラ感を演出するのにピッタリなんですね。

Warszawaによるアブストラクトな音色変化を伴うパッドサウンドも、実に味があります。

各シーンの小節数は途中のフィル以外ほぼで統一。BPMは135.0です。

同じフレーズをコピペして、いろんなトラックに貼る

楽曲の構成術についても伺いました。

あるシーンでは同じフレーズが2トラック鳴っていて、全体で聴くのとトラックだけ聴くのとではかなり印象が違うと思います。こういうコピペを良くやります。

色んなトラックに貼ってみて、いい感じに聴こえれば採用!って感じで。

たしかに、あるシーンでMadridに使われたフレーズが、別のシーンのMilpitasにも使われていたりします。

要するに「このトラックのフレーズはこれ!」と決め打ちせず、楽曲制作において柔軟に試行錯誤されているのですね。

それもまったく同じフレーズのコピペではなく、それをベースにしたパッドにシーケンスが追加されていたりと、実に細かく手が入っています。

これは(筆者をはじめとする)凡人にはなかなか真似のできない、ご自身の感性を頼りにしたトラックメイク術だといえましょう。

このやり方は、そもそも「いい感じ」と思えるセンスがないと成立しませんからね。

KORG Gadget 2の「新機能」をフル活用!

本作Secret Dreamでは、KORG Gadget 2から実装された「フェードイン・アウト」や「テンポチェンジ」を積極的に活用。

極端には変えてないので気付きにくいかも?

そうおっしゃいますが、こうした微妙な変化が「隠し味」として、トラックに起伏をもたらしているのも事実です。

かつてKORG Gadgetでフェード処理を行うには、「Mixer Level」パラメーターをトラックごとに設定する必要がありました。

2~3トラック程度ならともかく、数十トラックともなると相当骨の折れる作業でしたが、今ではシーンすべてのトラックに同時適用することができます。

やり方は、まずメイン画面の左下にあるFunctionボタンをタップ。そしてフェードイン、またはアウトさせたいシーンの「拍子(4/4 x 1などと表示)」部分をタップ

すると画面右上に、そのシーンの「拍子」「シーンテンポ」そして「フェード」を設定する、3カラムのパネルが現れます。

たとえば「フェードイン」させたい場合は、赤枠で囲った部分においてこれを有効化し、「どこでフェードを完了させたいか」をパーセント単位で定めてください。

そのシーンの最後を目指して音量MAXにするなら100%、シーンの半分の所でフェードを完了(4小節のシーンなら、2小節目の最後)させたい時は50%…と設定します

フィードインを50%に設定すると、シーンの中盤で音量が上がり切る。

言葉にするとややこしいのですが、パーセント表示を変えると波形表示も追従して動くので、音量変化のイメージを捉えやすいですよ。

そんなフェード処理をはじめとするコルガジェ2の新機能については、こちらにまとめてあります。

「ダイナミクスを重視」し、あえて音圧を抑える

CD・配信・Twitter…日々、私たちの前に現れては消えていく無数の音楽たち。

そんな中で少しでも存在感を高めようと、アマチュアDTM界に限らず「音圧競争」が叫ばれて久しいのは、皆さんご承知の通りでしょう。

先に述べたマスタリング・ツールの進化もあり、その傾向は昨今ますます強まっているのではないでしょうか。

しかし音圧を持ち上げすぎると、人よりも目立てるのと引き換えに、楽曲のダイナミック・レンジが乏しくなってしまいます。

この曲はダイナミクスを重視していて、一般的な音量より音が少し小さいかもしれませんが、そこはお好きなボリュームで聴いていただけたらと思います。

筆者としては十分な音が出ていると感じますが、確かに過剰なリミッティングやマキシマイズは施されていません。

あえて音圧感を抑え、繊細な音の動きを意識する。そんな配慮こそ、この楽曲の持つ「躍動感」に繋がっているのでしょう。

どうも「のっぺり」した抑揚のないトラックになってしまうとお悩みのあなた。あえての「音圧抑制テク」、一度お試しあれ。

伸びやかで圧倒的な「美メロ」。その作り方とは?

本作品を語る上で絶対に外せないのは、その美しい旋律について。本当に流麗で魅惑的な美メロです。

この素敵なメロディーは、一体どのようにすれば作ることができるのでしょうか。筆者なりに解説したいと思います。

作曲にインスピレーションを誘発させる「スケール機能」

KORG Gadgetには、作曲を支援するための様々な工夫が凝らされていますが、極め付けと言っていいのがスケール機能でしょう。

これは鍵盤やピアノロールに、ユーザーが指定した「スケールに属する音」だけを表示させることで、絶対に音を外さず、音楽的に間違いのない演奏ができる機能。

ブルースや教会旋法、ジプシーに琉球といった民族音楽など、古くから世界中で愛されている様々な「音階」を奏でることが可能な、いわばガイド機能なんですね。

こちらの鍵盤をご覧ください。明らかに、通常のものとは並びが異なっています。

ピアノロールも鍵盤と同じく、通常とは違う並びになっていますね。

これこそ、コルガジェ自慢のスケール機能で表示されているのです。

本作Secret Dreamでは、Scale TypeがDorian、KeyはD#と設定されています。

スケール機能を使うには、ガジェット音源左下にあるScaleボタンをタップします。

D#ドリアン・スケールは、五線譜にすると、このような音階となります。

このガイドに従い音を配置することで、決してスケールを外すことなく作曲することができるのです。

実際にやってみると分かりますが、スケール通りに鍵盤を弾いていくと、いつしか琴線に触れるような美メロが降ってくるんですね。

ギタリストがでフレーズを作るとき、しばしば「ブルース」や「ペンタトニック」といったスケールを弾きながら考えていくのと同じイメージでしょうか。

こんなに便利で強力な「スケール機能」。使わない手はないですよ!

メロディーに「妙味」をもたらす、アルペジエーターとLFO

このキャッチーな旋律には、なんと6トラックものガジェットが投入されています。

その内訳は、WarszawaLisbonEbinaSalzburg・そしてGlasgow2発

これらが一度に鳴るシーンもあるのですが、単純なユニゾンではなく、シーケンスパターンにバリエーションをつけて演奏されています。

例えば、旋律を担当する音色に「アルペジエーター」や「LFO」をかけるという技。

あとは同じ旋律でも別のシーンではオクターブ・シフトさせたりして、ガラリと印象を変えています。

これら多くのアイディアによって、シーンごとにカラフルな変化がもたらされているのですね。

「音色をきっかけにイメージを広げ、自分の中で曲が広がる感じ」

この曲がどのようにイメージされ出来上がって行ったのか、作者の心の内を紐解いてみましょう。

いつもはリズムを作りながら、イメージ(情景)が浮かんできてこういう曲にしようとか、先にテーマがあってこういう曲にしようってなるんですが、この曲はなかなかそれが浮かんでこないまま進めていて、iPadでの作業に移る前に出来た音色のキラキラ感をきっかけにイメージが広がり、それと同時にアートワークも描き、自分の中で曲が広がっていきました。

ここで「アートワーク」についての話題が出てきました。

曲作りの始めに、その曲の着地点をイメージできるビジュアルを定めたり、それを作曲しながら作ったりするということですね。

これは「無から物を作る」私たち作曲者にとっては非常に効果的だと、筆者としても共感する次第。

ごく個人的には、先にコード進行を考えてからメロディーを作る営みに通づる気がします。

「楽器ができない自分でも作曲できるGadgetって、すごい!」

最後に、グランプリ作品の作曲者・あやみさんからのメッセージを紹介します。

私自身は楽器の演奏は全くできません。打ち込みのみでの作曲です。

だけど、曲を作れてしまうGadgetって、本当にすごいなぁと思います。

Gadgetはリリース時から使っているのでもう5年半くらいでしょうか?

お世話になっています!KORGさまありがとうございます。

昔から「作曲」は、あらゆる趣味の中でもハードルが高かったろうと想像します。

あの五線譜を理解することから始まり、和音や音階、対位法といった「音楽知識」もさることながら、ピアノやギターなど、何らかの「楽器」が演奏できないと成立しにくいからでしょう。

そんな、あらゆる素養が要求された「作曲」も、今ではDTMプロダクトの進化により誰でも楽しめ、作品を発表できるようになりました。

特にKORG Gadgetは、この記事で述べてきたように、あらゆる作曲を支援する機能や、多くの工夫が盛り込まれています。

和音について知らなくても「CHORD機能」を使えば、指先一つで和音が弾ける。

音階の知識がなくても「SCALE機能」により、エキゾチックなスケールを自由自在に奏でられる。

リズム感が乏しくても、最近ではドラム系ガジェットに、幅広いジャンルのリズムパターンが用意されるようになりました。

ちなみに筆者も楽器を弾くことができませんが、KORG Gadgetのおかげで、作曲の素晴らしさを心の底から味わえています。

そんなあやみさんですが、来春の「音系・メディアミックス同人即売会」M3にサークルとして参加し、アルバムをリリースする計画があるそうです。

ご本人は謙遜されますが、楽器が弾けず、打ち込みだけの作曲家が、自身の創作物を広く世に送り出す…本当に素晴らしい時代だと感じます。

今回のKGRは、#GadgetSonic2019のグランプリ作品「Secret Dream」の作者、あやみさんをフィーチャーしました。

それではまた。Have a nice trip. ciao!

関連記事一覧

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。