究極のバーチャルスタジオ “KORG Gadget-VR” とは?
まずは、こちらのトレーラーをご覧ください。
これは KORG Gadget を使い、VR空間で作曲を行う様子。これまで iPad や iPhone、Nintendo Switch の画面上で操作していた「CGシンセ」のツマミを生身の手で操作するという、不思議な光景が広がっています。
今回は、「世界初の本格VR音楽制作統合環境」となる KORG Gadget-VR について、2021年7月時点で判明している情報を元にまとめます。
Oculus Quest 2 について
まずは、KORG Gadget-VRのプラットフォームとなる Oculus Quest 2(オキュラス・クエスト2) を知らない方のため、簡単にご紹介。
Oculus Quest 2は、あのFacebook社が開発したバーチャル・リアリティ(仮想現実)デバイス。2020年10月13日に発売されました。
500グラムほどの軽量ヘッドセットを頭からかぶり、バーチャル空間でゲームや映像を楽しむことができます。価格は2021年7月現在、64GBモデルが37,180円、256GBモデルは49,280円。
とにかく、これまでのビデオゲームでは味わうことのできなかった未知なる映像体験です。しかも立体音響空間とあって、その没入感は相当なもの。
完全ワイヤレスを実現していて、PCやコンソールは一切不要。この種の有力VRシステムとしては PlayStation VR がありますが、こちらは本体のみ。このスタンドアロンで楽しめるのが Oculus Quest 2 の美点です。
KORG Gadget-VR 現時点でわかっていること
現状、ネット上に出回っている情報をまとめてみましょう。
リリース予定日と価格
KORG Gadget-VR のリリースは2021年中を予定しているとの事。あっという間ですね。
価格については、2021年7月現在でまだ情報がありません。ちなみに KORG Gadget は iOS 版4,900円、Nintendo Switch 版5,000円です。
ベースはKORG Gadget for Nintendo Switch?
記事の冒頭で紹介した公式動画では、佐野電磁氏率いるDETUNE社がクレジットされていたり、UIやリサジュー波形の表示から KORG Gadget for Nintendo Switch を元に開発されている模様。
たしかに Nintendo Switch のコントローラー "Joy-Con" で空間的に操作するというフィジカルさは、Oculus Quest 2と相通ずるものがありますね。しかし、この画像をご覧ください。
あのガジェットは Warszawa というウェーブテーブルシンセ。Switch版には用意されておらず、iOS版でもスタンドアロン・アプリ Electribe Wave を別途購入して使えるようになるガジェットです。
どういうことでしょうか? 筆者としては、以下の仮説を考えました。
- デモ映像ゆえ、賑やかしで付けた(?)
- Switch版の標準16ガジェットに加え、もうひとつWarszawaを追加
- Switch版がベースなれど、Warszawaなど「iOS版の別売ガジェット」も用意
- KORG Gadget for Mac や Plugins のように「初めからガジェット全部入り」
この答えは、VR版のリリースと同時に判明するでしょう。楽しみですね。
ハンドトラッキング対応?
Oculus Quest 2には、両手で握るタイプのコントローラーが存在します。しかしKORG Gadget-VR はハンドトラッキングで操作を行える模様。
ハンドトラッキングとは、コントローラーを使わず、実際の手でジェスチャーを行うことです。
これは VR DAW にとって必須の仕様だと言えます。なぜなら指でツマミを回し、スライダーはつまんで操作する必要があるから。
バーチャル空間で、実際のシンセサイザーやミキサーを触るのと同じような体験が期待できますね。
必要なもの
KORG Gadget-VRで音楽製作を行うためには、Oculus Quest 2 本体以外にも必要なものがあります。
スマートフォン(最初だけ)
初期設定を行うため、開発元である Oculus のスマホアプリが必要です。しかし最初のセットアップを済ませたら、スマホは基本的に不要。その後はソフトの購入を含め、Oculus Quest 2 本体だけで行えます。
Facebookアカウント
Oculus は Facebook社 の一部門のためか、Facebook アカウントが必要となります。
筆者は個人的に Facebookを利用しないので、ちょっと納得いかない要件ではあります。VRを楽しむ上での必然性を感じませんし。。
リリースまでに改善してほしいこと
さてここからは、筆者が感じた改善点を述べたいと思います。ぜひ発売までに是正されたい事柄です。
フレームレートがイマイチ
この記事冒頭のオフィシャル・トレーラーを見て、あまりの臨場感に釘付けになりましたが、すぐに「ちょっとカクカクでは…?」と感じてしまいました。
シンセを操作し、リアルタイムレコーディングを行うDAWは、レイテンシーのない即応性が極めて重要。これはリリースまでに是非とも改善してほしいです。現時点での大きなウィークポイントでしょう。
空中操作ゆえの肩に来る疲労
360度カメラの如く表示される数々のウインドウは文句なくかっこいいのですが、壁面を操作するようなアクションが長引くと腕や肩が疲れると思います。
これについては動画を見る限り、ピアノロールやガジェットを操作するときは水平面になるので、あまり心配していませんが…。
バーチャル・スタジオの先駆者コルグ。その優位性は計り知れず。
実は、これまでもVRにアプローチした音楽アプリは幾つかリリースされています。たとえばこちら。
VRについては、まだまだ発展途上な分野だと思います。しかし今回の KORG Gadget-VR のインパクトは極めて強烈で、電子楽器界の老舗が他社に先駆け、最新VRデバイスで、本格音楽制作環境を開発したという事実は重大。この時点で、すでに業界の勝者に近づいていると思います。
発売後もiOS版やSwitch版のように、弛まないブラッシュアップに努めていただきたいですね。
前代未聞の仮想現実スタジオ KORG Gadget-VR。2021年予定のリリースを楽しみにしていましょう!
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