「クロス・モジュレーション」で、Let’s la FM! Montpellier 徹底攻略ガイド ③ X-Mod編
KORG Gadget版Mono/Poly「モンペリエ」について、とことん掘り下げるシリーズ企画も、はや3回目。
このシンセの最大の持ち味は、ふつうは決して作れないユニークな音を作れることでしょう。
今回覚えていく「クロス・モジュレーション」も、その手段の一つ。
フィルターを一切使わずに、劇的な音色変化をもたらす…たいそう上級者向けな技法かと思いきや、実はとっても簡単なんです。
YMOの名盤「BGM」でも多用された、魅惑のクロス・モジュレーション・サウンド。
「千のナイフ」(「BGM」版)では、主旋律のトップノートをなぞっていたり、奥の方でビヨビヨ鳴っていたりと、大活躍しています。
このテクニックを覚えると、あなたの音作りの幅も一気に広がりますよ!
クロス・モジュレーション=「超高速ビブラート」?
クロス・モジュレーションの原理は、非常にシンプル。
例えば、ある波形をビブラートさせるとき、私たちは「VCO」を「LFO」で変調させますよね?こんな感じで。
一方、クロス・モジュレーションというのは「LFO」ではなく、「VCO」で「VCO」を変調する…ただそれだけのこと。
考えてみれば、LFO(Low Frequency Oscillator)もVCO(Voltage Controlled Oscillator)も「オシレーター」ですから、やっている行為そのものは同じなんです。
ただし決定的に異なるのは、LFOでのビブラートは1秒間に3回とか30回とか、比較的ゆっくりなのに対し、VCOでは、その回数が比べようもなく速い点。
いわば「超高速ビブラート」なわけですが、あまりにも速すぎるゆえ、もはやビブラートには聴こえません。それどころか、倍音が増え過ぎて波形そのものが捻じ曲がり、音色が極めて過激に変わります。
以上が、クロス・モジュレーションの基本原理となります。
X-Modで「キラキラ・チャイム」を作ってみよう
クロス・モジュレーション(以下「X-Mod」)は、オシレーターでオシレーターの周波数をモジュレートすると前述しました。
これは、周波数変調…つまりFM(Frequency Modulation)をやっているわけです。
FMといえば、あのYAMAHA DX7が奏でる、金属的できらびやかなサウンドでおなじみ。あれと同じようなことを、これからKORG Gadget版Mono/Polyの「Montpellier」で試してみたいと思います。
まずはKORG Gadgetを起動してMontpellierを立ち上げ、テンプレートから初期音色「001 : 1VCO」を呼び出してください。
ステップ1 VCOは「三角波」を選択する
クロスモジュレーションの原理そのものは単純ですが、音作りに関しては、最初のうちはなかなか思うようにいかないもの。
X-Mod=FMは、オシレーターとオシレーターの掛け算により、豊富な倍音が発生します。
それゆえ、オシレーター同士の周波数の比率や、基本波形の種類など様々な兼ね合いで、音が複雑に変化するからです。
比較的倍音成分の少ない「三角波」はサウンドをコントロールしやすいので、まずはVCO 1の基本波形を三角波にしてください。
今のところ、まだこんなサウンドです。
ステップ2 VCO 2の音量を上げる
X-Modもオシレーター・シンク同様、オシレーター同士を掛け合わせることで波形を変化させる技法。
ということで、やはり2つのVCOが必要となります。
VCO 2の音量を、MAXにしましょう。もちろん波形は三角波で。
ステップ3 VCO 1の音量を下げる
これからVCO 1でVCO 2をFMするわけですが、モジュレートする側であるVCO 1の音をオフにし、モジュレートされるVCO 2だけの音にすると、その効果を際立たせることができます。
なので、VCO 1の音量をゼロにしてください。
ステップ4 X-MODをオンにする
SYNTH画面左下にあるVCO MODULATIONセクションの「ON/OFFスイッチ」をオンにし、「MODE」をX-MODのSINGLEに設定。
ちなみにDOUBLEは、VCO 1とVCO 2のモジュレーションに加え、VCO 3とVCO 4でも行うときに使用します。
そしてX_MODノブを上げ、モジュレーションの深さを調節しましょう。
今回作ろうとしている金属チャイムは、2.4あたりがちょうど良いかと思います。
すると、こんな音になりました。
ステップ5 VCO 2の音程を調節する
X-Modサウンドは、2つのオシレーターの音程差…つまり「周波数の比率」で、めまぐるしく変わります。
具体的にはVCO 2のSEMITONEノブでピッチを調節するのですが、何が正解というものでもなく、色々と試しながら適切なポイントを探ることになるでしょう。
ここでは、SEMITONEノブの位置を+17(1オクターブと4度上)としました。
ステップ6 VCA EGでチャイムっぽく整える
三角波から始まったチャイム作りも、いよいよ仕上げの段階。
VCAのADSRをこのように設定し、静かに減衰するチャイムをシミュレートします。
…このぐらいのツマミ位置でいかがでしょう?
ステップ7 1オクターブ上げる
よりチャイムらしくするため、全体的にオクターブを上げます。
AMP画面に移動し、TRANSPOSEノブを+12にすると12半音分、ちょうど1オクターブほど上の音程へシフトします。
少し気に留めて欲しいのは、このTRANSPOSEノブでの音程アップは、先ほど行った「VCO 2のピッチ調節」とは意味合いが異なるということ。
ここでは、単純に変調後のサウンドを1オクターブ上げるだけで、音色変化には関与しません。
これで、X-Modを用いてのチャイム音は完成です!
ステップ8 基本波形を「矩形波」にする
出来上がったサウンドに倍音が足りないと思ったら、VCO 2の基本波形を、三角波から矩形波に切り替えましょう。
そうして出来上がったチャイムがこちら。リバーブもかけています。
なお、今回作った音色は、中域でチャイム音になるのはもちろん、高域で演奏すると軽やかな「ベル」に、低域だと厳かな「鐘」の音として使えます。
以上、X-Modを用いての「チャイム」の作り方でした。
まとめ動画
今回行った音作りのプロセスをまとめた、1分間動画です。ご参考にどうぞ。
KORG Gadget版「Mono/Poly」で、お手軽クロス・モジュレーション!ただの三角波から、金属的なチャイム音を作る1分間動画です。VCOを、もう一方のVCOのピッチで変調(FM)させるので、音程差の調節がキモ!#コルガジェ pic.twitter.com/DmFJxRj3Ag
— くらんけ@gadget-junkies.net (@Gadget_Junkies) 2018年6月30日
X-Modで、楽曲のアクセントとなる「飛び道具」も作れます
今回は、KORG Gadget Montpellierの大きな武器である「クロス・モジュレーション」にフォーカスしました。
「これぞFM!」的なキラキラ・サウンドを作っていきましたが、X-Modが得意とするのは金属打楽器音だけではありません。
あまり正確なピッチを必要としない場面…たとえばアブストラクトで効果音的なサウンドは、X-Modの独壇場だと言えましょう。
例えば、こんな「チュイ〜〜〜ン」という、非楽音的で奇っ怪な音。
私たちはトラック・メイキングにおいて、楽曲のAメロからBメロ、Bメロからサビに移る際の展開づけとして「ドラムによるフィル」を行いますよね。
その目的は「リスナーにブロック・チェンジを示唆すること」ですから、別にドラムでなくてもいいんです。その代わりに、こういった「SE」でアクセントをつけてみましょう。
極めて効果的で、楽曲に強烈な印象をもたらすことができますよ。
KORG Gadget版「Mono/Poly」を用いたクロス・モジュレーション実験。今回は普通の三角波から、楽曲のアクセントになる「SE」を作るまでの1分間動画です。このような非楽音的なアブストラクト・サウンドこそX-Modの持ち味。ぜひマスターしましょう!#コルガジェ pic.twitter.com/U48wolhU2B
— くらんけ@gadget-junkies.net (@Gadget_Junkies) 2018年7月1日
クロス・モジュレーションは「過変調サウンド」ゆえ、どうしてもピッチが不安定になりますし、FMの調整具合は結構シビア。
そんな危うい音程感を逆手にとり、むしろ積極的に活用すると、他にはないユニークな世界を表現することができます。この記事の冒頭で取り上げたYMOのように。
さて、「オシレーター・シンク」「クロス・モジュレーション」と2回にわたり取り上げてきたKORG Gadget Montpellier「モジュレーション編」は、とりあえずここまで。
次回は、コードメモリーやユニゾン機能などを実現する、MontpellierのAMP画面を解説します。もうしばらくお付き合いください。
それではまた。Have a nice trip. ciao!
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